2025年2月21日から28日にかけて「第8回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。
今回のテーマは『1年に1度だけ使いたいもの』。
難しくも考え甲斐のあるテーマ。皆さん、いつも以上に楽しんで取り組んでくださいました。
今回の受賞者インタビューは優秀賞、丑の日プロジェクトさんです。
丑の日プロジェクトさんの「シャトルランブースター『らん』ちゃん」は、その名のとおり、シャトルランにおけるチート行為をするためだけのプロダクトです。
ラインに届かなかったつま先を手元のスイッチで伸ばす、というシンプルな動きですが、シャトルラン自体の邪魔にならないよう細やかな気遣いにあふれた機構。シャトルランのルールを熟知しているというニッチな面白さ、高度な技術力、目の付け所など話題をさらった作品でした。
毎回驚きのあるハードウェアを見せてくれる丑の日プロジェクトさん。今回はチームの中からアニーさんにお越しいただいて、「ランちゃん」の詳しい機構や制作の過程などについて伺いました!
丑の日プロジェクトさんのプレゼンは 00:54:08 〜
丑の日プロジェクト(今回の)メンバー
アニーさん
マークさん
↓↓↓丑の日プロジェクトさんの過去のインタビューはこちら↓↓↓
「第7回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー② 優秀賞 丑の日プロジェクト(アニー & たろう & なるき)さん
「第3回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー④ 優秀賞 丑の日プロジェクト(アニー & マーク)さん
「第2回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー② 優秀賞 丑の日プロジェクト (アニー & マーク) さん
──── 今回も受賞おめでとうございます。
アニー:ありがとうございます。
──── 今回のテーマ「1年に1度だけ使いたいもの」でしたけども、作品を思いつくまでの期間はいかがでしたか。
アニー:金曜日の夜にテーマが発表されて、一晩かけて考えたって感じですかね。いつもと比べたら早くアイデアが出ました。普段は大体、2日目のお昼過ぎくらいにうっすら方針が決まる、みたいなことが多いんで、それに比べたら今回は、2日目の朝にはもうはっきり決まってたんで、早かったですね。
──── いつもより早くアイデアが固まったのはどうしてですかね?
アニー:偶然ですね。
(一同笑)
──── 前回、アイディアをブレストしている時のMiroの画面を見せていただきました。今回もあれを。
アニー:はい。毎回やってますね、あれは。今回はマークと2人だったんですけど、通常通りにブレストしました。
──── マークさん、今回もアメリカから来てくださって…。
アイデアが浮かんだのは早かったって話だったんですけど、恒例の「らんちゃん」のネーミングについても簡単に触れていただいてもいいですか?
アニー:毎度女の子の名前をつけて、プロダクトに愛着を持たせようっていうコンセプトなんですけど、今回は「シャトルラン」から連想される女の子っぽい名前を考えました。わかりますよね、めちゃくちゃ安直ですよね「らんちゃん」って(笑)。でも一番かわいいのが「らんちゃん」だったんで決定しました。
──── 他に名前の候補は上がりましたか?
アニー:ありましたけど、それはメモってないのでちょっと思い出せないですね(笑)。名前はブレストに入ってないんですよ。ちょっと制作に行き詰まったり、開発に行き詰まったり、悩んでるときに「先に名前考えるか」みたいな感じで考えることが多いんです。
ハッカソンでは「アイデア思い浮かんだ!よっしゃ作るぞ!」でガーって作るんで、その時点では名前なんて全然頭にないんですよ。それで、行き詰まったときに「名前つけて愛情を込めて、ここからもういっちょ頑張ろうぜ」みたいな感じになるんで、ブレストは各自の脳内で完結するスタイルです。
考えたものをどんどん口に出して「今のかわいいね」ってなる、みたいな。だから、必死に手を動かしてるときとか、プログラム書いてるときとか、そういうときに考えてますかね。
──── 完成までこぎつけるためのテクニックなんですね。
アニー:そうですそうです(笑)。
──── 今回はおふたりでの開発だったということですが、役割分担はどんな感じでしたか?
アニー:今回は2人だったんで、特に役割が分担をしてないんですよ。Arduinoで制御してるんですけど、コーディングも2人で交代しながら、サーボモーターを組み込んだりするのも交代しながらやって。とにかく手が空いてる方が次のタスクを行う、みたいな感じで開発しました。
──── タスクは書き出したりしてるんですか? それともお互いがなんとなく認識してるって感じなんですか?
アニー:普段はカンバンを使ってます。どんどんチケット作って、これは作業中、これは完了、みたいな感じでチケットを動かしてやってるんですけど、今回は2人だったんで、チケットも作ってません。作業の対象が一つだけだったんで、タスクが混乱するようなこともなかったので。
前回の「ちゃりんちゃん」なんかはめっちゃカンバン使ってました。
──── 今回の「らんちゃん」は、シャトルランがテーマでした。どうしてシャトルランを選んだんですか?
アニー:「1年に1度だけ使いたいもの」っていうテーマだったので、1年に1度だけ「使えるもの」じゃなくて、「使いたいもの」を開発したいと思ったんです。最初はポジティブな、楽しい気持ちで使いたくなるようなものを考えたんですけど、そうなると大体、1年に1回じゃなくて毎日使いたいものになっちゃうんですよね。「1年に1回」にフォーカスすると、結局1年に1回だけ「使えるもの」になっちゃう。それならイベント自体はネガティブなものにして、その救済措置として使えるものが良さそうだねっていうところにアイデアが進んでいきました。1年に1回だけあって、やりたくないけれどもやるからには結果を出したいことってなんだろうって考えて「シャトルランでしょう」って(笑)。そこで、シャトルランの救済措置として使える装置を作ろうっていう流れになりました。
──── 機構なんかを詳しく見せていただきたいんですが…。
アニー:実物見ながらお話ししましょうか。手元で操作したかったんで、足から手元まで長いコードを使ってます。もう長すぎてごちゃごちゃなんですけど。
アニー:まず普通のランニングシューズがあって、その上にもう1個同じ靴を買って、上だけ切り抜いたものを重ねてくっつけて。
アニー:それにサーボモーターと、ストローの中に割り箸を通したものをグルーガンでくっつけて、シャフトにして動かしてます。裏側は、針金と割り箸を背骨みたいにして強度を出してます。
アニー:ここがお箸のケースで、軸を入れてまっすぐにしてる感じですね。
──── こう見るとやっぱりお箸ケースぴったりですね。
アニー:いろいろ試したんですけど、これがぴったりだったんですよ。色も黒だし。割り箸の潤滑油を買いに行く時間がなかったので、食器用洗剤を使って潤滑油の代わりにしました。
──── この潤滑油がないと滑らかに動かないんですか?
アニー:全然動かないんですよ。滑らかとかいう騒ぎじゃなくて、全く動かないんです。あんまり滑らないんで、他の手段考えなきゃって思ったんですけど、ここはあのボーイング社の不祥事がヒントになって。
──── ボーイング社って飛行機のですか?安全性が問題になってましたね。
アニー:そうです。その一連の不祥事の中で、飛行機の潤滑油の代わりに食器用洗剤を使ってるっていうのが、第三者委員会の報告で上がってて、とんでもねー!みたいなニュースがあったのを思い出したんですよ。代わりになるのねって思って使ったら、本当に代わりになったっていう。ボーイング社の炎上から得たアイデアです(笑)。
(一同笑)
──── すごいところからヒントが!
アニー:で、最後にサーボモーターを靴紐にくっつけて。Arduinoはズボンの下からコードを引っ張ってきて、電源と一緒にポケットに入れてある感じですね。そこからさらにまた袖の中を通して手元にスイッチを持ってきて操作すると。
──── いつもながら作りが精巧ですね。ありがとうございます。
アニー:かぶせるためにくりぬかれて使えなくなった靴は、捨てるのもかわいそうだし、家に置いてあります。
(一同笑)
──── 開発自体はいつもと比べて、時間かかりました?
アニー:いつもに比べたらかからなかったですね。いつもは最後から2番目とか、3番目とかにギリギリで提出するんですけど、今回はだいぶ早いタイミング、前半に提出できたんで。
──── 確かに、かなり早い方でした。
アニー:マークが仕事があってアメリカに帰らなきゃいけないってことで、最終日までいられなかったんです。だから、最終日の前の日までにはもうあらかた完成して、動画も撮らなきゃいけないっていう状況で。動画、1人じゃ撮れないんで。なので、なんとか前の日の夕暮れぐらいまでにあらかた完成させて、動画を撮って、あとは提出までにプログラムをもうちょっと書き直したり、1人で撮れる映像素材を撮ったりしてました。
──── プレゼンの資料や動画作成まで制作時間に含んでるのがすごいですね。
アニー:本当は、完成してから発表までの1週間で作れたらいいんですけどね。ハードウェアだと撮影が1人でできないもので、いつも開発期間中に撮り終えてしまうんです。だから毎度バタバタで(笑)。
──── 他のチームの作品で気になったものはありますか?
アニー:やっぱりPiedPiperさんとTakさん、ひげだるまさんは面白いですよね。プロダクトもそうだし発表も面白かったし。さすが強いなーって思いながら見てました。毎回最優秀賞獲りたいと思ってやってますけど、今回は皆さんクオリティが高くて、最優秀賞どころか優秀賞も厳しいし、特別賞もめっちゃ難しいぞと思って、どきどきしながら見てました。
──── 今回、参加チームも多かったですし、レベルも高かったですよね。
アニー:毎回そうなんですけど、レベルが高いだけじゃなくて、ちゃんと面白いのがツクアソのすごいところというか。にやにやしながら発表を見られるのが楽しいですよね。
──── 次回は8月下旬開催を予定してます。ぜひ、強くご参加をお待ちしております。
アニー:もちろんまた、ぜひ。楽しみにしています。
──── 本日はありがとうございました!