2024年9月20日から27日にかけて「第7回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。
今回のテーマは『ギリギリ商売できないアプリ』。
相変わらずの難しいテーマにもひるまず、みなさん素晴らしいアイデアをぶつけ合ってくれました。
受賞者インタビューは優秀賞受賞チームへ。今回は2チームいる優秀賞受賞チームから「丑の日プロジェクト」さんにお越しいただきました!
丑の日プロジェクトさんの自転車シミュレーションアプリ『ちゃりんちゃん』は、自転車に乗れない人向けに開発された、自転車のハンドル操作のみを練習することができるというシミュレーターでした。
肝心の「漕ぐ」という機能が完全に抜け落ちており、これを使ったところで自転車に乗れるようにはなりそうにないというところと、39,800円という絶妙に手を出しづらい価格設定が「商売できない」ポイント。今回もそのバランス感覚の良さを見せつけてくれました。
毎回クオリティの高いハードウェアを開発してくれるツクアソ常連チーム「丑の日プロジェクト」。ブレインストーミングの様子や開発のどたばたぶりについて楽しくお話しいただきました!
丑の日プロジェクトさんのプレゼンは 00:18:00 〜
丑の日プロジェクトメンバー
アニーさん
たろうさん
なるきさん
マークさん
↓↓↓丑の日プロジェクトさんの過去のインタビューはこちら↓↓↓
「第3回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー④ 優秀賞 丑の日プロジェクト(アニー & マーク)さん
「第2回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー② 優秀賞 丑の日プロジェクト (アニー & マーク) さん
──── ツクアソ第7回優秀賞、おめでとうございます。
一同:ありがとうございます。
──── 今回もすごいものを見せつけられました(笑)。テーマが発表されてからアイデアが浮かぶまで、どんな様子だったのかお聞きしたんですけれども。
アニー:金曜日の夜8時にテーマが発表されて、何を作るか最終的に決まったのが土曜日の午後1時とかだったんで、そこまでずっとブレインストーミングしてました。意見が割れたりして結構悩みましたね、みんなで。
──── アイデア出しはどのように行ってるんですか?
アニー:その時のみんなのシチュエーションによりますね。今回はみんなで集まれたんですけど、実際にちゃんと顔を合わせられたのは土曜日の朝でした。金曜日の夜にテーマが発表された時にとりあえずディスコードで共有して、たろうは夜行バスの中で、いろいろ考えながら東京に向かってもらって。今日、マークは時差の関係でこのインタビューには参加できてないですけども、ツクアソの時は飛行機の中で考えながら日本に来てくれて。ここにいるなるきくんは、Miroにいっぱい書き出してくれてました。
──── なるほど。お互いにアイデアを出しておいて、土曜日の午前中に集まった時に打ち合わせて。
アニー:そうですね、そういう感じでした。ツール自体は主にみんなでMiroを使ってやってます。今回のブレインストーミングはみんな移動しながら(笑)。
──── 『ちゃりんちゃん』の他にもアイデアは出たんですか?
アニー:山ほど出ました。今回特になるきくんが一番案を出してくれて。
なるき:そうだったっけ。
アニー:最終的に決めたものは、なるきくんが直接出してくれたアイディアじゃなかったんですけどね。でもなるきくんがいっぱい出してくれたものがみんなのベースになってるんだと思います。ブレインストーミングがなかったらできなかったというか、毎回そうなんですけど。
──── ちなみにどういう過程でアイデアが出たのか、みたいなのって…。
アニー:Miroの画面をちょっとお見せしますね。
──── あ、すごい。
アニー:この中から「商売できない」ってどういうことなんだ、みたいなのをどんどん出していく感じでした。魅力が足りないとか、コンプラ的にアウトとか、刺激性が足りないとか、存在意義というか一番大事なことが抜けてるとか、とにかくそれぞれがどんどん出してって、それを連ねていって。コンプラ系ってハラスメントに容易につながっちゃうので実際は選べないところですけど、とりあえずアイデアのために何でも書き出すスタイルで進めました。これは毎回ですね。ハッカソンのルール的にはアウトだけど、世間的には大丈夫そうなものは、ハッカソンとは別に作ったりしてます。こうやってアイデアを出して、カンバン方式でタスク管理して…というスタイルです。
──── すごい本格的。ちゃんと「プロジェクト」ですね。
アニー:今回は「存在意義」がポイントになって出たアイデアですね。自転車シミュレーションアプリっていうのでもう「面白い!」って爆発的に話が盛り上がって。コメダ珈琲に集まったんですけど、爆笑しちゃってうるさかったと思います(笑)。商売できなくて悔しいけど、最終的には「まあ楽しいからいっか」って思えるようなものにしたいっていうのが、ポリシーというか、軸というか。
──── 付箋を貼っていくようなビジュアルでやるのはいいですね。すごい参考になります。ありがとうございます。
アニー:Miroはすごく助かるサービスです。メンバーが揃ってなくてもそれぞれが書き足していけばいいので。僕が仮眠取ってるときに他の人たちが一気に書き込んでくれたり、それを参考にみんなが離席してるときに僕が書き込んだり。時差のあるメンバーもいて、スケジュールがぴったり合うことが少ないので、重宝してます。
──── 今回は開発時間は今までより長めの3日間でしたが、時間的にはいかがでしたか。
アニー:それぞれ用事があってちょっとずつ時間作ってやってたんで、3日でギリギリだったよね、結局。
たろう:うん。
──── 今回の開発で一番苦労した点はどこですか?
たろう:移動ですね。
(一同笑)
たろう:いや本当にそうで、買い出しとか、撮影するための移動とか、それが大変でした。まだサイズがちっちゃいものだったんで良かったんですけど(笑)。
アニー:なるきくんは最後の塗装も大変そうだったよね。
──── 塗装したんですか?
なるき:今回、自転車のハンドルだったじゃないですか。それが本当にただの木で、そのままだと安っぽく見えるよなーっていう思いから塗装を。その日は雨だったんで、やむを得ずアニー君の家のベランダで塗装したんですけど、シンナーの匂いはきついし、塗料が回らないように一面新聞紙で養生しなきゃいけないしでいろいろと大変でした。棒だけのために。
(一同笑)
アニー:でもこれ、塗ったかどうかで明暗が分かれたって本気で思ってます。
なるき:そこはこだわるべき所だと思って、ハンドルっぽく見せるんだという一心で。
──── デモを見る限りは自転車のハンドル部分にしか見えませんでした。確かに木目が見えたりしたら気になったかもしれないですね。
なるき:そういう違和感は大事だと思ってるんで。
アニー:シリアルキラーみたいな格好になった甲斐があったよね、なるきくんが。
なるき:なんかの犯人としてニュースに出ててもおかしくない見た目だったね、あれは。
(一同爆笑)
アニー:本当は、開発中の自分の部屋をまるごと、3日間ずっと生配信しようかと思ってたんです。準備が間に合わなくてできなかったんですけど。
なるき:過去に生配信したことあったんですよね、丑の日プロジェクトとして。別のハッカソンなんですけど。あれ、需要あったのかな?
アニー:他の参加者から「チームメンバーみんな寝ちゃって1人で開発してたら、心強かった」という声はありました(笑)。
僕ら、プレゼン動画もクオリティ高く作りたくてすごく頑張ってるんですよ。プロダクトも細部までこだわって、細かい所まで塗ったりしてますし。そうすると、一部の人から「これ本当に期間中にやったんですか」とか「本当は前から作ってたんだろ」みたいに言われることがあるんですよね。
──── 疑われちゃうんですね(笑)。
アニー:そうなんです。そういうのもあって、生配信して証拠を提示しようって発想だったんです。でも生配信って、単純にオンラインでやりつつオフラインの良さも出せるというか。他の参加者も含めて「みんなでやってる」感が出そうですよね。
──── 連帯感が出せて、証拠にもなると。丑の日プロジェクトさんは今回で5回目の出場ですけど、本当に毎回クオリティが高いですもんね。疑う人もいるんですねえ…。
そういえば、作品名も一貫して「ちゃん」づけですけど、どうやって決めてるんですか?
アニー:基本的にはみんなで話し合って決めてます。でも今回はだいぶギリギリだったんで、あんまり話し合う時間は取れず「これでいいか」って(笑)。
「ちゃん」づけなのは、可愛い女の子の名前をつけることで「絶対にお前を完成させてやるからな」っていう気持ちで開発に取り組めるという。
──── 名前は完成する前に決めるってことですか?
アニー:そうですね、完成前に。作ってる途中で決まることが多いですね。何を作るか決めて手を動かしてるうちに「この子こういうところに特徴があるね」というのが分かってきてから、名前をつけます。
──── 愛着が沸き始めてから名前をつけるんですね。
アニー:名前をつけるとバグを放っておけなくなるんですよ。
(一同笑)
──── 他に、開発過程での苦労は何かありましたか?
アニー:たろうがハードウェアを担当したんですけど、火事にならないように色々気をつけてやってくれてたよね。
たろう:家が燃えないように頑張りました。
(一同笑)
たろう:家のコンセントから電源取ってたんですよ。ブレーカーを一応つけたりしてたんですけど、Amazonで買った延長コードをニッパーでぶっちぎって、芯線を剥き出しにしてそれを自分たちのハードウェアに突っ込んでコントロールするという…。ちょっとグレーな改造だったかもしれない。
アニー:グレーなの?あれって。
たろう:わからん。法律大丈夫だったかな。
アニー:法律は大丈夫でしょう。あなた電気工事士の免許持ってるから。電気工作していいという資格を。免許なかったらアウトだったかもね。
たろう:このメンバーだと僕とアニーが電気工事士の資格を持ってるんですよね。職業的にもみんなきっぱりジャンルが分かれてるんです。僕が電気専門の仕事してるのでハードのアイデア出しをする、アニーがプログラマなのでプログラムのアイデアで、なるきくんがデザイン関係なので、デザインとか塗装とか。職業と役割がきっぱり分かれてるんで、誰が何をするかで揉めたことがないですね。
アニー:なるきくんは車のデザインをやってるんですよ。
なるき:そうなんです。肩書としてはカーデザイナーになります。最近は車以外にも、アニメーションを作ったりとかもしています。丑の日プロジェクトの活動は、スキルの復習と新しいスキル開発のいい機会になってます。
アニー:大抵、無理難題が発生して「そんなんやったことねーよ!」って言いながらやらせるという(笑)。カーデザイナーやってる人に自転車のハンドルを塗らせたり。
なるき:Arduinoなんか取り扱うことのない職業なので新鮮です。こういう基盤のデータがあるという知識を得ました。知らない分野への知見も広がってありがたいです。
アニー:マークの仕事は構造みたいなのを扱うのが専門です。飛行機とかの設計をしたりする人なので。
──── 規模がすごいですね。
アニー:設計系はマークが担当することが多くて、たろうはロボットを作ってる会社なんで、配線とかに強いですね。全員、仕事で培った技術をハッカソンに持ってきてめっちゃ無駄遣いして、また仕事に戻って次のハッカソンに向けて新しい何かを学ぶ、という。
──── いかに技術を無駄遣いするかというのは、ツクアソの信念です。運営としてはもう嬉しい限りです!
アニー:もういつも楽しいです、ツクアソ。
──── 最後に、今後のツクアソに期待することは、何かありますか?
アニー:他のハッカソンにも出るんですけど、やっぱりツクアソが一番幅があるなと思っています。真の意味で他の参加者の発表が気になるのがツクアソなんですよ。そこがすごい楽しいと思ってます。テーマも、他のハッカソンと違って社会的意義に全く結びついていなくて、タイトル通り「作って遊ぶ」ができてる。ここだけは本当に変わってほしくないと思ってます。
今日来れてないマークも、グループチャットでいつも「ツクアソは毎回テーマが面白くてとっても好き」って言ってるので、ぜひ、何を変わらないことを期待したいです。
なるき:アプリに限定してない空気がありがたいです。丑の日プロジェクトは実物を作ってなんぼというのが特性なので、僕も、今後もぜひこの空気のままでいてほしいと思ってます。
たろう:僕も2人と一緒です。このままでいてほしい。一番自由度が高いハッカソンだと思ってるんで。アメリカのハッカソンに行くと、火炎放射器とか作ってる人がいるんですよ。僕も派手好きなので、いつかそこまで行きたいです。
(一同爆笑)
なるき:そこまで行けるかな。
たろう:かっこいいの作りたくない? 火炎放射器。千葉の海岸とか行ってばーってやりたいよね?
なるき:唯一無二のハッカソンになりそう。
アニー:ほぼ反則技だけどな、火炎放射器って。
たろう:気持ちとしてはそれぐらいド派手なこともできる可能性が魅力的だなと思ってます。このまま、ずっとくだらないことを一生懸命やりたいですね。
──── 来年は2月の終わりあたりで予定してますので、ぜひ次回もお会いできればと思います。楽しみにしてます。今日はありがとうございました!