2022年8月18日から26日にかけて開催された「第3回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)。
「『いや違う、そうじゃない』とツッコまれたくなるモノまたはサービスをツクる」をテーマに、ユニークかつエッジィな作品を作ってくれた受賞者たちのインタビューを公開します!
今回は、優秀賞を受賞したチーム「丑の日プロジェクト」のメンバーによるインタビュー。
丑の日プロジェクトさんの「リュック型延長コード」は、その名のとおり、両脇に電源の付いたリュックサックです。コードは最大10mまで延ばすことができ、同時に120台のスマートフォンを充電できるだけの電流に耐えられる仕様となっています。
「webアプリじゃない」「役に立たないはずが役に立っている」など、あらゆる「そうじゃない」が重なる秀逸さが高評価でした。
第2回ツクアソでも優秀な成績を残した丑の日プロジェクトさん。今回はどのような制作過程だったのか、どんな気持ちで開発に挑んだのか、語ってくれました!
丑の日プロジェクトさんのプレゼンは 01:34:45 〜
「丑の日プロジェクト」メンバー
アニー さん
マーク さん
──── 第2回に続いてのご参加ありがとうございます。今回の再参加の動機について、お聞かせ願えますか?
アニー:やっぱり、第2回に参加したときが楽しかったっていうのが一番大きくて。いろいろなハッカソンにも出てるんですけど、その中でもかなり自由度が高いというか、自由度が高い上に、テーマもかなりしっかり設定してくださるので、ちょうどよい縛りのある自由ですね。やっててずっと楽しいっていう。
マーク:僕も同じです。第2回に参加したときがすごく楽しくて、雰囲気がちょうど僕たちのやりたいこととマッチしてた。
僕たちはものづくりをしてますけど、堅苦しいものはあんまり作らないんですよね。ちょっとネタ要素いれて面白くしようとするんですけど、ツクアソはそれを十分に発揮できるような雰囲気で、僕らが100%楽しみながらできるハッカソンだなと思ってたので、今回もぜひ参加したいと思いました。
──── 「自由度が高い」とおっしゃってましたけど、今回はその中でもなかなかのテーマでしたよね。これについての印象は。
アニー:自分たちのスケジュールが合わなくて、テーマ決めに参加できなかったんです。結果だけを見た第一印象は、「なんじゃこりゃ」。
(一同笑)
アニー:でも「なんじゃこりゃ」っていうのは、決してネガティブな感想じゃなくて、「一体これどうなっちゃうんだろう」っていうわくわくのが大きかったですね。それこそマークがさっき言ったみたいに、僕らの空気が活かせるテーマなんじゃないかと思いました。僕たち優勝できるんじゃないかと。正直な気持ちです。
マーク:僕たちにぴったりのテーマでしたよね、これは楽しいぞって。
──── テーマが発表されてからの開発の流れはいかがでしたか?
アニー:僕たち、かなり事情が特殊だったんです。普段マークがアメリカにいて、僕が東京にいるんですけど、ちょうどマークの帰国日とハッカソンの開始日が重なってしまって。数年振りに日本に帰ってきたのに、マークは実家に帰らずに僕と一緒にホテルに缶詰っていう。帰国早々徹夜するって状況で開発しました。
今回はハードウェアで作りたいねっていうのがあったので、秋葉原に近い、浅草にホテルを取って、そこにふたりで朝チェックインして、とりあえずお風呂に入って、そこでじっくりアイディア出しをしまいした。お風呂から上がる頃にはテーマが決まって、買い出しに行く、みたいな流れでしたね。そこからどんどん開発していって、またお風呂入ったり休憩したりしながら。次の日に、実際手を動かしてみて足りなかった部品をまた買いに行って。
──── この、「かばんちゃん」に行き着いたのはいつ頃だったんですか?
アニー:朝の風呂の時ですね。
マーク:風呂の中で話し合いましたね。
(一同笑)
アニー:爆笑しながら話し合ってて、多分周りにすごい迷惑だったと思います。
──── 前回は、お2人の間に時差があって、それぞれの時間で開発されたってことを、インタビューでおっしゃってたと思うんですけど、今回は物理的には同じ場所で一緒に開発されたんですね。それはだいぶ、共同作業のやり方が変わるかなと思うんですが。
マーク:そうですね、2人で一緒にいるとハードウェアの作れる幅っていうか、話し合いながら作れるので、より楽しくできましたね。
今回同じ場所で一緒に開発したんですけど、僕は帰ってきて早々で、時差ボケの中いきなり徹夜したもんですから、体内時計がもうおかしくなってしまって(笑)。アニーも徹夜してたんで、結局2人ともわけわかんなかったです。
──── (笑)。実際に、完成して応募できたのどれくらいでしたか?
アニー:締切の3秒前でした。大袈裟でなく本当にぎりぎり。
(一同笑)
──── 本当にギリギリでしたね。実は、丑の日さんなかなか応募がなくて心配してました(笑)。
アニー:応募フォームの埋められるところだけ先に埋めて、ぎりぎりまでやって。
──── タイムスタンプは、8月20日の19時59分08秒でした。残り1分なかった。
マーク:やばい。
アニー:あの3秒は体感だったんだな。体内時計がぐちゃぐちゃになってた。
──── だいぶどきどきしましたね。ハードで行こうという方針にしたのは、3回目出場が決まってからですか?
アニー:はい。マークの帰国日と重なるっていうのがわかったので、せっかく一緒にいるなら、どんなテーマに関わらず、ハードウェアでやりたいよねって言って。もちろん無理な場合もあったと思うんですけど、できるだけ。
──── ちなみに資格(第二種電気工事士)はこのために取ったんですか?
アニー:いつかこういう時がくるんじゃないかと(笑)。
ツクアソに使うぞって思って取ったわけではなかったんですが、いざ欲しいってなったときに第二電工がないとできないってなったらやだなっていうのを見越して取ってたんです。初めてそれが生きる時が来たんで、「今日のために取ったんだ!」って盛り上がりました。作ったものを持ってる分にはいらないんですけど、実際コンセントをつなぐってなると、もしもこれが家庭用電気工作物だって指摘されてしまったらまずいので。そんなことないでしょうけど、万が一誰かに文句を言われても、「いやいや、持ってますよ」って言えるっていう。そういうことですね。
──── 家庭でも使えますもんね。
アニー:家庭用電源の電圧をそのまま使うんで、危険なことには変わりはないですね。安全を期して。
マーク:直電差したら全部いきますからね。
──── テストしてるの、ホテルでしたし、有資格者だったのはとても安心でした。
アニー:実際その資格を取った時に得た知識が発表資料で生きたりとか。そもそも何を買わなきゃいけないのかっていうのにも、かなり役立ちました。意味はめちゃくちゃありましたね。「この日のためだったんだ!」って思いました。
──── 今回ハードで応募されてるのは丑の日さんだけだったので、ツクアソ的に新しさがあって、非常に面白かったです。「ちゃん」しばりは続けてるんですね(笑)。確か、愛嬌を持たせるためですよね。
アニー:そうです、愛嬌を持たせるのと、やっぱり名前を付けた瞬間から、「こいつを完成させてやらなきゃ」って気持ちがぐっと沸きます。
──── これ、実際のカバンにハサミを入れたりしてるんだと思うんですけど、このために用意した物ですか?
アニー:これを作るって決めてから、必要な形をしていて、かつ値段がそこまでしないものっていうのを探しました。なんだかんだ一番時間がかかったのって、このカバン探しかもしれないですね。2人でいろんなお店回って。
マーク:最後の最後に見つけましたもんね、いいカバン。見つかってよかった。なかったらもう僕らのカバンに穴開けるかって話で(笑)。
アニー:その覚悟を決める直前くらいだったもんね。
(一同笑)
アニー:最終的にスリーコインズで500円で売ってるのを発見しました。
──── 無事に作品として完成して、日の目を見れて良かったですね。
アニー:実際、あの後めちゃめちゃ使ってるんです、かばんちゃん。
──── そうなんですか!
アニー:ハッカソンやってる最中は、まったく役に立たないものを作ろうって思ってたんで、水面下でどっちが持って帰るかって戦いがあったんですよ。作ったはいいけど、絶対邪魔になるぞって思ってました。でも、形が出来上がり始めたあたりから、作ってる最中に、もうかばんちゃんが必要になってきたんですよ。グルーガン使ったんですけど、コンセントが短くて、しかもホテルだとコンセント少ない。なので、そこである程度できあがっていたかばんちゃんを背負ってやる、みたいな。なんと、かばんちゃんがないと、かばんちゃん出来上がらないという事態。
──── すごい、C言語でC言語作るみたいな。
アニー:その後も、マークとどこか行ったりする時には普通にかばんちゃんを持って行きます。まずかばんちゃん出してから、いろいろ出し始めますもんね。
──── 延長コードで良いのでは?(笑)
アニー:僕らも最初、そう思ってたんですよ。めちゃくちゃ無駄なもん作ったなって思ってたのに、結構背負えるっていうのが大きなスペックで。ずっと背中に電源があるっていうのが、すごい便利。例えば先々週、別のオフラインのハッカソンに参加したんですけど、テーブルに備えてある電源が少なくて。そこで堂々と延長コード出してやってると、「あいつら何やってんだ」ってなるんですけど、かばんちゃんって見た目がかばんなんで。あいつらめちゃくちゃ電気使ってるぞ感がないんですよ。自分たちの横にかばんとして置いといて、さりげなく電源が使えるんで、カバンという形に意味があったなって、後からわかるっていう。
マーク:持ち運べるのいいですよね。ひとつの使用例としては、ドライヤーがすごく便利です。お風呂からあがって、ドライヤーしてるときって動けないじゃないですか、コードがあるから。だけどかばんちゃんがあれば、髪を乾かしながら部屋中歩けるんですよ。それがすごい便利。あとは掃除機ですね。コンセント差し変えずにどこへでも歩いて行ける。意外とそういう便利な部分が出てきてしまって。
──── 確かに、生活の中で想像すると、活躍のタイミングが多いですね。背中に収まってるっていうのが。
マーク:僕らも最初は、「いや、そうじゃない」「延長コードでいいだろ」って突っ込まれることを期待して開発したんですけど、結果的にすごい便利なものができてしまった。これ大丈夫かな、どうしようって話し合いましたよね、発表。
アニー:めちゃくちゃ話し合いましたね。本当に突っ込まれるかなって。
──── 大誤算ですね(笑)。ちなみに、かばんちゃんは今、どちらがお持ちなんですか?
アニー:今、僕の家にありますね。僕の方がその時持って帰れる荷物のキャパだったってだけで手元にあるので、もしかしたらこの後喧嘩になるかもしれないです。
(一同笑)
──── もういっそ量産してみては?
アニー:先週あったハッカソンでも、「これ、あったら買いますよ!」って人がいました、意外と需要あるんだって。
──── 量産いいかもしれないですよ、本当に。そんなかばんちゃんも、残念ながら最優秀賞ではなかったんですけども、今回の最優秀賞作品に関してはどう感じてますか?
アニー:僕は、プレゼン見て、正直負けるならここだろうなって思ってたところなんで納得の結果です。もちろん結果発表の瞬間まで、自分たちが優勝だと信じてはいたんですけど。だからこそやっぱり悔しいですね。
マーク:同感です。作ってるときは、自分らが優勝だって思ってましたけど、発表見てるときはやっぱり「うわー面白い」とか、「これいいアイディアだ!」って何回も思いました。もちろん発表の時まで優勝を信じてましたけど、最優秀賞が決まったときは納得でしたね。面白かった。悔しいですけど。
アニー:発表も2人で笑いながら見てたもんね。「なんだこれ!」みたいな(笑)。
──── 最優秀賞「ソトネル」のユニバックさんは、第1回からの常連ですよね。前回も受賞されてましたし。丑の日さん、次回こそは。
アニー:ライバルとして。
マーク:ユニバックさん、先週のハッカソンで一緒だったんですよね。
──── ユニバックさんは「僕たちが出ないハッカソンはない」っておっしゃってましたからね(笑)。
マーク:先週参加したハッカソンでも熱い戦いを繰り広げて。いいライバルです。友達でもあるっていう。お互いにどんどん高めあっていく感じがいいですよね。
──── ちょうどツクアソも、2回連続で賞を取ってるのってこの2チームだけなんですよ。
アニー:そうなるとまた余計に次こそ勝ちたいなー。
マーク:優勝したいな、次こそ。
──── ぜひ。丑の日さんの世界をこれからも見たいです。また戻ってきてください。ありがとうございました!