2024年3月8日から15日にかけて「第6回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。
今回のテーマは『洗練された無駄のない無駄な機能』。
いつも以上にセンスが問われるテーマとなりましたが、皆さん想像を超える驚きと楽しさを持ったプロダクトを見せてくれました。
さて、恒例の受賞者インタビューです。
まずは最優秀賞から。ツクアソ常連であるTakSanさん、今回で2度目の最優秀賞受賞となりました。
TakSanさんの作品『キー未入力の無駄な時を無くすべく、無駄にキー入力し続ける洗練されたシステム』は、一定時間キーボードを触らずにいると、空白を埋めるように「MUDA」を書き込み続けてくれるというシステムです。
高度な技術と物理的なアイテムを組み合わせて使用することで定評のあるTankSanさん衝撃の新作。キーボードの裏に糸を張って直接キーをタッチし続けるようにするという、洗練された技術の無駄遣いぶりに圧倒されました。
ユニークなプロダクトを次々と繰り出すTakSanさんの、そのアイデアの源泉や、ツクアソへの思いなど、常連ならではの視点から語っていただきました!
TakSanさんのプレゼンは 01:08:37 〜
↓↓↓TakSanさんの過去のインタビューはこちら↓↓↓
「第2回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー① 最優秀賞 ハック無謀 (TakSan & akitam) さん
「第5回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー④ 特別賞 TakSanさん
──── 最優秀賞おめでとうございます。
TankSan:ありがとうございます。嬉しいです。
──── 2度目の最優秀賞ですね。今回は常連さんとしての視点でいろいろお伺いしようと思ってるんですが、まず、ツクアソの短い開発時間でプロダクトを仕上げるために、どのように時間管理されてますか?
TankSan:時間管理ですか。苦手なところではあるんですが。
──── 苦手なんですね(笑)
TankSan:苦手ですね。今回も締切の前日まで動けませんでした。もう今から作り始めないと間に合わへんっていう、ぎりぎりのところでようやく動き出した感じです。本当は、毎回新しいアイデアで1からやりたいんですよ。で、動き出さないと本当に間に合わないっていうデッドラインを意識しながらあれこれ考えるんです。どうしても思いつかんかったら、時間足りんかったらこの辺をやろうっていう保険みたいなアイデアを用意した上で考えてるんですけど、結局保険のほうになっちゃうんですよね。今回もそうです。
──── 今回の作品は「保険」のアイデアだったんですか。
TankSan:そうです、既存の作品のアレンジです。改造って言ったほうがいいかな。どのみちメーカーフェアに出品するつもりだったので、展示用に改造することを考えてたんですよね。
もともとは「リモートdeキー暴動?」という作品でした。オンラインでしゃべると、キーボードが勝手に動き出して打ち込んでくれるというものです。3年くらい前にテレワークになった時に、「サボってんちゃうか」と思われてる感を払拭するために作ったんですよね。キーボードを会社に置いておいて、一生懸命仕事してますよアピールができるかな、みたいなノリで作りました(笑)。
これをもうちょっと展示会でも分かりやすいように、ランダムでもいいから無人でも自動で動くように改造したいってところが出発ですね。それを今回は全て「MUDA」の文字列にしたと。
──── なるほど。ツクアソ以外の場でも常にいろいろものづくりしてるTakSanさんですけども、毎回開発する時に、新しく習得するスキルとか知識ってあるんですか。
TakSan:ありますね。今回は、キーボードをループさせると危険ということが分かりました(笑)。例えば声をマイクに通す時、フィードバックが増幅されてハウリングにつながったりするじゃないですか。そんなようなことがキーボードにも起こるんです。今回は仮想キーボードみたいな仕組みを組み込んだんですけど、キー入力のフィードバックをそのキーボードを監視しているPCにもう一度フィードバックさせるって作業をさせたおかげで、同じキーが押され続けるという無限ループが出来上がってしまって、えらいことになりました。
──── 開発段階でですか?
TakSan:開発段階で起きたんですが、プレゼンの直前にもトラブりました。デモでいったん動かそうとして、プレゼンに使うPCにつないじゃってたので、「MUDA」ってそこら中に打たれてしまって。
(一同爆笑)
TakSan:プレゼン資料のタイトルまで全部「MUDA」。パニックですよ。いつもならプレゼン開始して、映ってるのを確認して、一呼吸置いてから始めるんですけど、焦って何も映ってないまま始めてしまった。
──── そういえばそうでした。でもそんなことが起こったようには見えませんでしたよ。いつもどおり落ち着いて見えました。
TakSan:焦りました。かつてなく。
──── そういう演出なのかな、くらいに思ってました(笑)。今の質問に少し関連しますが、開発中に直面した課題やつまずきと、それをどうやって克服したのかについてお伺いしたいです。
TakSan:毎回いろいろ地雷は踏みます。踏みすぎて覚えてないくらい。今回の一番は、さきほどお話しした無限ループですね。あとは、今回初めてHIDキーボードとしてArduinoを使ってみたんです。電子工作の入門キーみたいな基盤なんですけど、キーをカスタマイズできるんですよ。ショートカットキーを自分でプログラムしたり、コントローラーを作ることもできる。その仕組みを初めて使ったんで、ちょっとつまずきましたね。そもそも開始が遅すぎてハマってる場合じゃないのに、自分で作ったプログラムを思い出すのにもむちゃくちゃ時間がかかって。
──── 以前の作品を改造となると、どうやって作ったのか思い出すところから始めなきゃいけないですもんね。
TakSan:そうそう。コードがでかすぎて複雑になっちゃってて。そもそも開発したのが3年前だったので、記憶との戦いでした。動くに違いないと思いつつ、そっちに足元をすくわれるっていう(笑)。
──── 改造ならではの悩みですね(笑)。ちなみに今回、作品タイトルはどういう経緯で決まったんですか。
TakSan:何も浮かばなかったんで、タイトルで説明しました。私はわりとそういう傾向があるんですよね。毎度説明的な長いタイトルで、発表の時噛むまでがセット(笑)。
──── 今回も噛んでらっしゃいましたね(笑)。
実際開発に取り掛かるまでにかなり時間がかかったとおっしゃってましたが、やっぱり今回もテーマは難しかったですか? アイデアが浮かびにくかったというか。
TakSan:そうですね。普段から技術の無駄遣いはしているほうだと思ってるんですが、「洗練された」「無駄」そのものっていうので、「うーん、なんだろう?」ってなっちゃいましたね。技術の無駄遣いはいつもやってますが、無駄なものを作るのはあんまりなかった。
──── そうですね!ツクアソは技術の無駄遣いを喜ぶイベントですけども、「無駄なもの作る」って、確かになかった。似ているようで全然違う発想です。そこが今回の難しさでしたね。今回のアイデアは言わば保険的なものだったってお話だったんですが、他に浮かんだもの、何かありましたか?
TakSan:いろいろ浮かんだのは浮かんだんですけど、ことごとく却下でした。何せギリギリに動き出すので時間がなさすぎるんですよね。却下のネタは非公開、ということで。
──── ではぜひ次のツクアソに活用していただいて。
他の方のチームの作品でお気に入りのもの、ありましたか。
TakSan:『Coogle』ですね。ZEN SELECTさんはいつもながらプレゼンが上手くてずるい(笑)。あと、『謝罪FAXジェネレーター』とか、『消える電卓』も良かった。あの絶妙にイラッとする感がすごい好きです。めっちゃ見たいやん、なんで隠すの?って(笑)。まったく実用的じゃなくて最高です。
今回は初参加の人も結構いましたよね。『鬼の会話断捨離「まとめるくん」』も面白かったです。LINE一文字で返してくるって発想がすごい。初参加であそこまでちゃんと作り込んできたのもすごいなと思いました。
──── では最後に、常連のTakSanさんとして、ツクアソの楽しみ方、どんなマインドで参加されているのかを教えてください。
TakSan:テーマ募集からもう始まってますね、ツクアソは。テーマを考えるのがまた面白いと思っています。事前にいろいろネタを上げておいて、その中からどれ選ぼうかな、みたいな感じで参加してます。自分のテーマを選んで、また「今回はどんなのが来るんやろうな」っていうワクワク感も好きです。決まったら決まったで必ず迷走するんで(笑)、そこも楽しむ。少なくとも丸1日は迷走するんで、それが面白いんちゃうかな。迷走期間も楽しむ、それがツクアソです。このスタイルはぜひ、続けて欲しいです。
──── テーマ決めから楽しむ、迷走も楽しむ。名言ですね!まるごと楽しんでいただいて本当に嬉しいです。次回は9月下旬を予定しています。またぜひ、ご参加ください。
TakSan:ぜひ。
──── どうもありがとうございました!