「第6回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー③ 優秀賞 Memetan Tech Tips(とり子 & memetan)さん

2024.07.01

2024年3月8日から15日にかけて「第6回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。

今回のテーマは『洗練された無駄のない無駄な機能』。
いつも以上にセンスが問われるテーマとなりましたが、皆さん想像を超える驚きと楽しさを持ったプロダクトを見せてくれました。

今回のインタビューは優秀賞、チーム「Memetan Tech Tips」さん。第4回ツクアソでは「インコーズ」の名前で特別賞を受賞しています。

チーム「Memetan Tech Tips」さんの「謝罪FAXジェネレータ」は、ぶっ飛んだ内容の謝罪文を生成し、FAXしやすいよう印刷してくれるというものでした。

用途不明の「無駄」、技術の「無駄」、紙の「無駄」という3つの無駄を実現し、ChatGPTのプロンプトを絶妙に調整して、緻密ながらどこにも使えない謝罪文を生成するという表現の面白さにも注目が集まりました。

親子チームのMemetan Tech Tipsさん。この絶妙な発想はどこからやってきたのか、どのように開発までの時間を過ごしたのか、詳細に語ってもらいました!

Memetan Tech Tipsさんのプレゼンは 00:50:40〜



↓↓↓Memetan Tech Tipsさんの過去のインタビューはこちら↓↓↓
「第4回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー④ 特別賞 インコーズ(とり子 & memetan)さん

Memetan Tech Tips」メンバー
とり子 さん
memetan さん

──── 優勝賞おめでとうございます。まず、受賞の感想をお聞かせください。
とり子:息子のmemetanも、何か賞を取れたらいいなって言ってたので、嬉しいです。今回テーマがすごく難しかったので…。役に立つものを作ろうと思って無駄なものができることはあるんですけど、いざ無駄なものを作ろうとすると難しいですね。
──── 確かに、今回はまずアイデア出しに苦戦するチームが多かったように思います。
とり子:先日、「AI Meeting」というイベントにお声がけいただいて、この「謝罪FAXジェネレーター」と、その他いくつかの作品について発表したんですけども、とても好評で。
──── すごい。それは先方から依頼があったんですか?
とり子:そうです。Xでこの受賞についてつぶやいたら「ぜひ登壇してください」と…。FAXという発想が面白いとお褒めの言葉をいただきました。若者世代であるmemetanとその母親世代の私の感覚がちょうどよく融合したというか。確かにFAXって、若い人からは出ない発想ですよね。
AI Meeting アーカイブ。00:26:51〜とり子さんの発表です。
──── そもそも紙に出力しようって思わない世代ですよね。その面白さもあっての受賞ですから。素晴らしい。
とり子:最初はFAXという部分はなかったんですよ。謝罪文を生成して終わりだったんです。最後の最後で「FAX送れたら面白くない?」って話になったんですよね。
──── 最後に。へー! 今回は3日間ありましたが、どのタイミングで「FAX送ろう」ってなったんですか?
とり子:3日目ですね。
──── 本当に最後の最後ですね(笑)。
とり子:そうです。もはや私は言うだけに等しいんですけどね。作業はmemetanが(笑)。
──── 今回は受賞が2回目で、参加自体は確か3回目でしたか。
とり子:そうですね。以前は「インコーズ」というチーム名で。毎度名前が変わってすみません。構成メンバーは変わってませんので(笑)。
──── (笑)。第2回にご参加いただいて(インコーズ「ノンビリ動画TockTubeddit」)、第4回では特別賞でしたね(インコーズ「デジタルししおどし リズムを刻め」)。
↓↓↓前回のインタビューもあわせてお読みください↓↓↓
第4回ツクアソ 特別賞 インコーズ インタビューはこちらから

とり子:そうですね、今はProtoPediaに上がってます。
──── アイデアが生まれてから開発していく過程について教えていただきたいと思います。今回で3回目の参加ということなので、時間配分などは慣れましたか?
とり子:それが、今回は期間中に予定が入っていたりして、時間が取れなかったんですよね。しかもアイデアがなかなか定まらなくて。2日目まで何にもできてなくて、今回はダメかもしれない、辞退するかも…ぐらいの危機的状況で。
──── じゃあ、2日目の後半ぐらいにアイデアを固めて、急いで作りきったっていう感じだったんですね。
とり子:そうです。アイデアを2人で練っていた時は、全くまとまらなくて。実は「このアイデアで行こう!」ってはっきり定まってもなかったんですよ。2日目に私が用事で外出してて帰ってきたら、memetanが「こんなん作ってみたんだけど」ってあいまいだったアイデアを形にしてくれていたんです。それに残りの時間で肉付けしていった流れですね。
──── じゃあ、開発時間自体は1日なかったぐらいですかね。
とり子:そうですね。丸1日はなかったと思います。出かけて帰ってきたら出来上がってて(笑)。で、最終的にFAXの機能を実装しようっていう話になったんですけど、memetanは自分の分のバグ潰しにかかりたいから、FAX部分はお母さんが自分でやってよって言われて、いろいろ調べながらいじったんですけど、これが全然うまくいかない。
──── どのあたりがうまくいかなかったんですか?
とり子:これ、結局出来上がったものは「FAX送信用の謝罪文を印刷する」って形に落ち着きましたが、最初は本当にFAXを送ろうと思ってたんですよ。それで、FAXのAPIがあって、それを使おうとしたんですけど、うちに肝心のFAXを受信する機械がなかったんです。それじゃあ全然面白くないなと思って、じゃあプリンターで出力しようと。今度はプリンターのライブラリを探して実装したんですけど、動かなかったんです。使ったライブラリがうちのプリンターと合わなくて。
しかもそのライブラリ、ずっとメンテされてないから「動きません」みたいなコメントがいっぱいついてるようなやつで。そこでmemetanが「もういい、自分でやる!」って別のものを探してきてくれたんですよね。出力形式が違うタイプのやつを読み込んだらうまく動きました。
──── かなり紆余曲折があったんですね。
とり子:本当に。変な文字化けもするし…。ProtoPediaにそのあたり詳しく載せてますけども。memetanには「Windowsでやるからそんなことになるんだよ」って怒られて(笑)。彼はLinuxの人なので。
──── memetanさんLinux使うんですか。強い。ちなみに今回の開発環境は何だったんですか?
とり子:Node.jsです。
──── なるほど。このProtoPedia、まとまってて分かりやすいですね。memetansさんのコメントが面白い。「Windowsなんか使うな、プログラマー初心者か」。
(一同爆笑)
とり子:ここに載せてる図もmemetanが描いてくれたんです。キャッシュの処理に苦労しまして、たくさん生成されるんで、アクセスの度に生成に行かずにキャッシュしておいたものを出すという作りにしていて、AI Meetingではその辺りが「斬新ですね」と評価していただきました。memetan本人も「大変だった」って言ってましたね。
──── 確かに、リクエストがいっぱい飛ぶと請求が大きくなるって書いてますね。しかし、memetanさん、若いのに裏側の工夫もされてるのがすごいですね。システム運用の観点がしっかりしてます。memetanさん、おいくつでしたっけ?
とり子:16歳です。
──── 16歳!驚愕ですね!いやすごい…。
気を取り直して、アイデアについてもう少しお聞かせください。かなり時間がかかってしまったとおっしゃってましたが、やはり難しかったですか?
とり子:無駄なものを狙って作るって、面白くなくなっちゃうことが多くて、難しいですよね。「面白い」無駄なものを作るっていうところでもう…。
──── 「オチ」をつけるのは難しいですよね。確かに大抵のハッカソンでは「役に立つ」「何かができる」ものを作るのに、今回は「無駄」というところに収束するので、かなり皆さん頭を悩ませてたのかな、と思いました。他のチームの作品を見て、いかがでしたか?
とり子:ZEN SELECTさんの「Coogle」が面白かったですね。あとやっぱりTakさんの作品はいつも魅力的ですね。物が動くと面白さが増します。画面上だけじゃなくて、物理的なものを動かしたいていう欲もあって、今回FAXを持ち出したんです。物とプログラム、セットの方が面白みが増すような気がしました。
──── 前回の「デジタルししおどし」もそうでしたね。アナログでモノが動いてると、デモも見てて楽しいんですよね。今回のツクアソで新しく手に入れた知識や技術ってありましたか?
とり子:memetan的にはいろいろあったと思います。プリンターに出力するあたり、初めての試みでしたし。
──── 今回はChatGPTを使ってますけど、これは過去作品でも使用したことがありますか?
とり子:先ほど話題に出した「AI Meeting」で、「謝罪FAXジェネレーター」と一緒に、もっと前に開発した2つの作品も発表したんです。その中の1つでChatGPTを使ってます。
工事とか消防点検とか、マンションで掲示される紙のお知らせをカメラで撮って、そこの情報を抜き出してGoogleカレンダーに概要と内容と日付を登録してくれるというものです(「カレンダーキャプチャー」)。それで初めてChatGPTを触ったのかな。
──── なるほど、過去の作品作りが今回に活かされたんですね。webサービスとして公開してるんだ、これは便利ですね。
とり子:スマホからもパソコンからも撮影できるんで、なかなか便利だと思います。学校からのお便りの管理とか。
──── あれ、全部紙ですもんね。紙をデジタルにする「カレンダーキャプチャー」を作った人が、今度はデジタル情報を紙に出力する「謝罪FAXジェネレーター」を作るっていうのが、また面白いですね。
とり子:本当ですね。言われて初めて気がつきました。
(一同笑)
──── そこを自由に行き来できるのが、インコーズ改めMemetan Tech Tipsさんの武器なんですね。物理とデジタルを融合させるのがすごく上手です。
とり子:この「カレンダーキャプチャー」も、もともとは私がmemetanの力を借りながら作っていたんですけども、最終的には「ちょっともう見てられない!」って全部作り変えられました(笑)。
私が作っていた時は、文書の内容から日付なんかを切り出す別のAPIを使っていたんですけど、memetanがそれをChatGPTに切り替えて。
──── いや、これ賢い。使い方が賢いですよ。ゼロベースでこれを考えられるっていうのはやっぱりすごい。memetanさんの実力は底が知れないですね。次は何を見せてくれるのかなと期待してしまいます。
とり子:ありがとうございます。
──── 次回のツクアソは9月を予定しています。またぜひご参加ください。
とり子:本当に楽しいので、またぜひ参加します。今回も大変お世話になりました。
──── ありがとうございました!