「第8回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー② 優秀賞 鹿ちゃんさん

2025.05.01

2025年2月21日から28日にかけて「第8回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。

今回のテーマは『1年に1度だけ使いたいもの』。
難しくも考え甲斐あるテーマ。皆さん、いつも以上に楽しんで取り組んでくださいました。

今回の受賞者インタビューは優秀賞、鹿ちゃんさんです。

鹿ちゃんさんの「年に一度だけだから…仲良くしよ?」は、社会人の誰もが忌み嫌う年末調整と確定申告をテーマとした恋愛ノベルゲーム。年末調整の「ねねちゃん」と確定申告の「かなちゃん」と仲良くなるための正しい分岐を選んでいくことでハッピーエンドを目指します。

生成AIなどは使用せず、妄想力のみで組み立てたという本作は、ノベルゲームとしての完成度が高く、税金に関する豆知識を散りばめるという細やかさ、画面の華やかさなど多くの評価ポイントがありました。

生成AIと自前の妄想力をバランスよく組み合わせた作品を作り出した鹿ちゃんさん。どんなふうに制作したのか、また次回参加への思いなどを聞かせていただきました!


鹿ちゃんさんのプレゼンは 00:54:08 〜



──── 優秀賞受賞おめでとうございます。
鹿ちゃん:ありがとうございます。
──── 初出場でしたね。ツクアソはどこで知ったんでしょうか。
鹿ちゃん:connpassですね。一番最近やっているハッカソンを調べたらヒットしました。
──── ハッカソン自体にはよく参加されているんですか?
鹿ちゃん:そうですね。今までに何回か参加しています。5回ぐらいかな? ソロだったり、チームだったりまちまちですが。
──── ちなみに直近ではどのようなハッカソンに。
鹿ちゃん:直近と言っても1年くらい前になってしまうんですが、Flutterハッカソンとか、国土交通省が今推してる PLATEAUを使ったハッカソンとかですかね。
──── いずれもwebとかスマホアプリとかでの参加ですか?
鹿ちゃん:そうです。私、ハード方面は本当に何もできないので、ソフトウェア専門です(笑)。お仕事もソフトウェアのお仕事なので。
──── 今回、テーマが発表されてからアイデアが出るまでどのくらいかかりましたか?
鹿ちゃん:割とすぐに浮かびましたね。普段から10個ぐらいアイデアを出して、その中から選ぶようにしているんです。今回も同じような感じで初日にだーっと出して、この恋愛ノベルゲームで行こうって決まったのは、2日目の朝ぐらいです。
──── オープニングの翌日ですね。早いな。じゃあ、オープニングが終わってテーマが発表されてから、すぐにしっかりアイデア出しして、寝て起きて、どれにしようかな、みたいなイメージで。
鹿ちゃん:そんな感じで1日寝かせました(笑)。
──── アイデア出しが難しいですよね。でもそんな中で10個も候補があるのはすごいです。翌日から着手できる状態もなかないいスタートだったんですね。なぜ、確定申告を題材に選んだんですか?
鹿ちゃん:「年に1度だけ使いたい」の「だけ」っていう言葉にちょっとネガティブなものを感じて。「1回だけだから」「1回だけしかやらないだろ」っていう入り方ですね。マイナスを変な方向に解決する作品が、ハッカソンで賞をとりやすいっていう傾向があるんですよ。だから自分の中で面倒くさいことって何かな?と考えて、それを解決するためにちょっと変な方向に持っていこうと。実質解決してないけど変な風に解決してやろうっていうのを、アイデアのベースとして考えました。
──── まさにでしたね。確定申告や年末調整ってもう憂鬱ですもんね。あの手順を楽しいラノベ風にして、選択しながら進んでいくというストーリーがすごく面白かったです。ギャップも狙って着地させたんですか?
鹿ちゃん:そうです。プラス続きだと面白くないかな、と思って。どこかでちょっと不快な、ひねくれた要素を入れたいと思って作りました。
──── あの挿絵やキャラクターはどうやって用意したんですか?
鹿ちゃん:あれは「SeaArt.AI」っていう生成AIがあるんです。無料で使えるものなので、それで作りました。今、流行ってるというか、アニメ絵を作るならこれ使おう、みたいな流れがあるんですよね。作ったキャラクタのちょっと口を開かせたいとか、目を閉じさせたいとかも、プロンプト作るとうまいことやってくれます。
──── 同じキャラクターを再度生成できるんですね。
鹿ちゃん:そうです。同じキャラクターにちょっとずつ表情や動きを付けられます。ただ、指が6本だったり服の形がおかしかったりするんで、そこは自分でペンツール使って。私、本来絵は描けないんですけど、頑張ってそれっぽく修正しました。
──── 背景はどうしたんですか?
鹿ちゃん:背景はフリーの素材を組み合わせました。キャラを作るときに、プロンプトにグリーンバックって入れておくと背景をはめやすく作ってくれるので。
──── そうか、最初から切り抜きやすくしておくんですね。動画でもそうですよね。えー、面白い。このサイト知らなかったです。
鹿ちゃん:今、いろんなのがあって楽しいですよね。
──── 自分が知らない技術を知れるというのも、ハッカソン参加の醍醐味ですよね。作品の内容についてなんですけど、基本的にはノベルゲームの様相でトゥルーエンドを目指すんだと思うんですが、エンディングいくつかありますよね。何パターンぐらい作ってあったんですか?
鹿ちゃん:バッドエンドは10個弱ぐらい用意しました。
──── あ、そんなに。何回かやったんですけど、全部違うパターンだったんですごいなと思って。
鹿ちゃん:一応、キャラの性格に合わせてバッドエンド回避できるようにはしていました。女の子が「主人公の役に立ちたい」と思っている設定なので、年末調整を複雑にしない項目を選ぶとバッドエンドになるように。
控除とか、いっぱい保険に入ってるとか、iDeCoやってるとかだと、だんだん難しくなるので、年末調整が。難しくするとキャラがたくさんしゃべってくれるので、トゥルーエンドっていう。
──── 面白い。短時間でかなり作り込んだんですね。ストーリーやセリフ回しは生成AIは使わずに妄想でということでしたが(笑)。
鹿ちゃん:セリフと言い回しについては、自分で考えました。完全に妄想で(笑)。キャラに命を吹き込むにはAIは使っちゃダメかなと思って、そこだけは自力で頑張りました。なんとか書けてよかったです。
──── 確定申告や年末調整の知識も必要ですよね。その辺りはどのように?
鹿ちゃん:家に本があるのでそれを漁りました。実は昔簿記を取ろうと思って諦めたんですよ。その時に買って置いてあった簿記の本とか、ネットなんかを使って調べて、こういう感じかなって。途中で差し込んでいた説明画像とかも自分で作りました。拾ってきた画像を使うのはよくないなと思って…。
──── ちゃんと知識で裏付けた分岐がたくさんあって、それを上手に帳尻合わせてて、感心しました。
鹿ちゃん:ありがとうございます。でもストーリー展開は無理矢理な部分も…(笑)。猫にびっくりして骨折するとか、交通事故が起きて「そういえば車といえばトヨタよね」とか、もうギャグで無理矢理つなげました。
──── その遊び心がまたよかった。オリジナリティがあって、ちょっと尖ってて。
鹿ちゃん:今回は「年に1回」っていうテーマでしたけど、それ以前にツクアソ自体の「作って遊ぶ」っていう大きなテーマを意識したかったんです。作って遊べるものがいい、それを頭の片隅に置いて作りました。
──── 素晴らしい。作品名の「年に1度だけだから」っていうのも完全にオリジナルのタイトルですか? 何かのパロディとかでもなく。
鹿ちゃん:そうです。でも、今思えばパロディにしても面白かったですよね。「年に1度だけ」っていうフレーズは入れたかったので、それを条件に生成AIにいくつかアイデアはもらって、最終的には自分で考えてつけました。
──── なんか本当にありそうでいいですよね。ロゴも可愛いし。ロゴのクオリティもすごく高い。このロゴは何のツールを使ったんですか?Canvaとかですか?
鹿ちゃん:アイビスペイント」っていうお絵描きアプリを使って作りました。そもそも私は全然絵が描けないんですけど、動画を見ながら見よう見まねで。
──── 短時間でいろんなことに挑戦して出来上がったんですね。他のチームの作品で気になったものはありましたか?
鹿ちゃん:すごいいっぱいありました。シャトルランのやつ(丑の日プロジェクト「シャトルランブースター『らん』ちゃん」)が面白かったですね。アイディア出しから、動画からすごくて。あと、織姫と彦星が会うために地球をめっちゃ回すっていうゲーム(カルピスだけじゃだめですか? 「彦星浮気チェッカー」)もすごい作り込まれてて完成度が高いなと思いました。あと、今回じゃないんですけど、何回か前の「水」がテーマの回のツクアソ(第4回ツクアソ「水!!」)で、確か中学生の子がししおどしを作ってましたよね(インコーズ「デジタルししおどし リズムを刻め」)。あれはもう本当にびっくりしましたね。今の若い子にはもう勝てないと思いました。
──── そうですね。前回の優勝者も高校生でしたし、学生がコンスタントに出場してくれるので、そこもツクアソの面白さですね。
鹿ちゃん:大人からは出てこないアイデアが新鮮で。それも含めて本当に勉強になりました。
──── 次回の開催は8月の下旬を予定しています。ぜひご参加いただければ。
鹿ちゃん:はい、ぜひ参加したいです。
──── どうもありがとうございました!