2023年8月17日から25日にかけて「第5回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。
今回のテーマは『大人のカンニング』。
「カンニング」の解釈をどうするかが肝となるテーマでしたが、安定の個性爆発ぶりで、皆さん楽しい作品を見せてくださいました。
さて、第5回も恒例の受賞者インタビューを行いましたよ。
今回は、映えある最優秀賞を受賞したチーム「ZEN SELECT」の4名によるインタビューです。
ZEN SELECTさんの作品は、「なるほどですね」という相槌のキーワードを合図に、わからない単語などをAIが検索して、接続したイヤホンからこっそり音声で教えてくれるというアプリ。会議中や商談中に知らないワードが飛び出してきても慌てずに対処してくれる優れものです。
使用中でもばれないように時計が表示されるというところが面白く、情報取得の成否をさりげなくインジケーターで知らせてくれるという配慮も素晴らしい設計でした。画面がスタイリッシュというところも高評価の作品です。
4人中3人が非プログラマという、ちょっと珍しい編成のZEN SELECTさん。チーム結成秘話や、プレゼンまでの道のり、プログラマチームではなく、クリエイターチームならではの視点が面白いインタビューです!
ZEN SELECTさんのプレゼンは 00:07:28 〜
「ZEN SELECT」メンバー
ZEN さん
ずんだ さん
suckhal さん
ハマ さん
──── ZEN SELECTさんは常連チームのひとつですね。初の最優秀賞受賞、おめでとうございます。チーム結成のきっかけから教えてください。
ZEN:私がyoutubeにチャンネルを持ってまして。youtuberとして活動しているんです。内容としてはカードゲームを取り扱うようなチャンネルでして、そこでずっと1人で配信してました。そのチャンネルのライブ配信に遊びにきてくださったのが今のメンバーです。自分たちでもカードゲームを作ってみようぜって作り始めたのがきっかけですね。
──── じゃあプログラマの集団というわけではないんですね。
ZEN:そうですね。プログラマはハマさんだけで、ずんださんがデザイナー、suckhalさんがイラストレーター、僕がyoutuber(笑)。
僕(ZEN)が選んだゲームを売る、みたいな意味で「ZEN SELECT」っていうチーム名だったんですけど、やってることが変わっても名前だけは残ってるという形です。
──── じゃあ普段はこのメンバーで別の活動をしてるんですか?
ZEN:ツクアソには第2回からこのメンバーで参加してますけど、「ZEN SELECT」自体はブランド名のような気持ちで、カードゲームをしたり販売をしたりしています。Amazonにも作品を何点か置いていて、カードゲームやボードゲームの販売イベントに参加したりもしています。
──── 広く活動されてるんですね。ばらばらの4人ということで、他のメンバーの方も簡単に自己紹介してもらっていいですか?
ずんだ:ずんだと申します。「ZEN SELECT」にはデザイナーという役割で関わっています。コロナが始まった頃からZENさんのyoutubeを見始めて、コメントしたのがきっかけで交流が始まって今に至るという感じです。
ツクアソでは、アプリのビジュアル面やロゴマークを作ったりしています。普段では、カードゲームのデザインを担当しています。プログラムに関しては、ド素人のド素人です。というか、ハマさん以外の3人全員ド素人。
──── プログラムと、webに関しても分からないという状況ですか?
ずんだ:そうです。そこへハマさんのお声がけがあって飛び込んだのが、第何回だったっけ?
ハマ:第3回からだね。俺はプログラムを書くところを全部やる人。
ずんだ:第3回、4回、5回と出て、3度目の出場でようやく最優秀賞とれました。目標達成。嬉しい限りでございます。
──── 最初の参加から最優秀賞狙ってたんですか?
ずんだ:もちろん。どうせやるなら名を残したいじゃないですか。
ZEN:毎回優勝を狙ってますよね。
ずんだ:でも実際見てると本当に面白い人いっぱいいるからねー。いやー最優秀賞、嬉しい。
suckhal:イラストレーターで参加しています。最初にZENさんが遊んでたゲームに商業的に関わったことがきっかけで、この界隈で盛り上がってるZENさんたちをちらちら横目で眺めてたんですけど(笑)。ハマさんに「ゲーム作ろっ」みたいな感じで声をかけていただいたんだったかな。
イラストレーターということで、モチーフだったりの下地を作って、デザイナーのずんださんにぶん投げて組み上げてもらうっていうやり方です。
ただ、今回については描くものがなくて、最初のアイディア出しには参加しましたけども、ほぼずんださんのデザインで出来てますので、今回私は賑やかし要員ですね。
ずんだ:前回、前々回はごりごり描いてもらいましたので、助かりました。
suckhal:今回無理に描かなくてよかったです。だからこそシンプルに綺麗にできたなと。
──── 確かに、洗練されてました。
ZEN:われわれは明確に役割が決まっているので、ある程度アイデアが固まってくると、特に言わなくてもなんとなく「自分は今回これぐらい」って察知できるんですよね。
──── ちなみZENさんの役割は?
ZEN:このハッカソンに関しては、完全にプレゼンテーション係です。
アイデア出しは4人で均等な力加減でやるんですけど、それ以外のことでyoutuberにできることはそれぐらいですよ(笑)。
アイデア固まって、6割ぐらい方向が決まると、完全に「プレゼンどうするか」にシフトしちゃいます。そこを中心に考えるんですよね。
今回の「なるほどですね。」は、要するにAIが音声で教えてくれる「カンニング」なんですけど、テキストで残るという機能については僕が提案したんです。カンニングとしては音声で教えてもらって完結してるというか、それがかっこよかったんですけど、プレゼンテーションの終わりを考えると、もうひとつ盛りたい。僕がプレゼンで言いたいからこの機能を足してくれっていう提案だったんですよ。サービスとしてどうかじゃなくて、プレゼンの締まりが良くなるからこの機能を足してほしい、というお願いをしました。
そういうふうに、僕からはプレゼンありきでアイデアを足すこともあります。
──── あのテキストでログが残る機能は「かゆいところに手が届く感」があったと思います。
ZEN:あれがあるのとないのでは、最後の5秒で喋ることがだいぶ変わってくるんです。最後のほうまで「それいる?」って議論になりましたけども。
ハマ:俺とバトった(笑)。
ZEN:プログラマ的には「いらん」だけど、プレゼン的には欲しかったんですよ。「おっ」って思ってもらいたいわけじゃないですか。
ハマ:いらん!と思ったけど、今回作るものあんまりなくて余裕あったから作って差し上げました。
ZEN:とにかくプレゼンの時に「おっ」て思わせるには、を考えるので実用性の部分が飛ぶことがあるんですよね。
ずんだ:実用性に走ると「いらん」だろうけどね。まあ大体こんな感じでやってます、「ZEN SELECT」は。
(一同笑)
──── 役割がはっきりしてて、この人ならやってくれるだろうという信頼がお互いにあるんですね。
ZEN:少なくとも僕は全員に対して信頼がありますね。きっとこの機能つけてくれるんだろうとか、こんなフォント作ってくれるんだろうとか。特にプログラムはもう完全に任せる感じですよ。実際ハマさんなんか、「できないことは何もないんだけど」ってところから話がスタートしますし。みんなどんと構えてくれるから、好き勝手言える。
──── 「なるほどですね。」のアイデアはどなたが思いついたんですか?
ZEN:ハマさんですね。カードゲーム作る時もそうですけど、最適解を出してくるのはプログラマのハマさんが多い印象です。もちろんみんなでディスカッションした中で出てくるものではあるんですけど。
ずんだ:結構悩んだんだよね。
ZEN:そうね。アイデア自体は、それこそマッチングアプリとか下世話なものまでいろいろ出てきて。でも出てきたアイデア全部集約すると、「何かをきっかけに、疑問に対する答えをくれる」っていうのが、今回のお題の最適解だよねっていうことに、ハマさんの力で気づいたんですよ。最終的に「なるほどですね」っていうワードもたしかハマさんが。
ずんだ:あとさ、割と最初の方で、紳士淑女っぽい、大人っぽい立ち振る舞いにしようっていうのもテーマにしたよね。
suckhal:「大人の」をそういう捉え方でやってみようかっていうことにしたんだよね。
ZEN:そうそう。上品に。大人っぽくっていうところからスタートして、でも「大人っぽい」と「カンニング」はミスマッチなんですよ。どうしても「カンニング」って下世話なほう、普段見れないもののほうに行くから。だからちょっとラインを下げて幅を広げたのが今回の感じですね。
──── そうやってアイデアを揉んでくださったんですね。
ずんだ:ここがプログラムできない3人にとっても、喋りどころっていうのもあって。
ZEN:ハマさん、なんであれが出てきたんですかね?
ハマ:俺がコミュ障だからじゃない?
ZEN:あー、そんな話出たかも。「なるほどですね」って、例えば目上の人に言っちゃいけないような、どっちかっていったら失礼なワードなんだろうけど、でもそれにすがる瞬間があるよね、みたいな話。
ずんだ:履歴で「コミュ障がよく使うあいづち」って書いてあるわ。
(一同笑)
ZEN:でも、使っちゃいけない言葉だからこそ面白いと思ったんですよ。それがトリガーになってるのが。
ハマ:それはね、ZENがコミュ障じゃないからだよ。あのプレゼンの場にいたほとんどのエンジニアは、「確かに」と思ったはず。
ZEN:でもそれ、大事ですよね。あの場にいるメンバーに刺さらないといけないわけだから、プレゼンというものは。だからラインとしてはちょうど良かった。あれ以上掘ったらもう伝わりづらくなってしまったと思います。
僕らはいつも深掘りしすぎちゃう傾向があるんですよね。
──── アイデアを掘り下げ過ぎるということですか?
ZEN:そうです。でもそれだと外し過ぎるんですよね。思えば第3回、第4回はそのせいで場に刺さらなかったんじゃないかと思ってます。
もしこの第5回が最初の参加だったら、「なるほどですね」では行かなかったんじゃないかな。「なるほどですねって普通すぎない?」「みんな落ち着くとこじゃん?」ってなって、もう一歩踏み込んじゃう。ひねろうとしちゃうんですよ。こういう方向にシフトできたのも、過去の参加実績のたまものですね。今思えばですけど。
──── どれだけ見てくれる人に刺さるかを考えるということですね。
ZEN:優勝狙うのであれば。もちろんそういうの関係なく全部持ってちゃうプレゼンやアイデアもあるとは思うんですが、そうじゃなくてみんなに共感してもらえそうなラインを考えるのもあるよなって。
それは2回目の参加(第4回)時に感じてました。前回、絶対優勝できると思ってたんですよ。でも全然優勝できなかったから。「違うんだ!」って。
ハマ:何の賞もなかったもんね、前回。
ZEN:「水差し係長」がんばったのに。あのときにsuckhalさんに描いてもらったキャラクターを、今回のシチュエーションにマッチしてたんでさりげなく登場させました。それもあって今回はまさに集大成だったかもしれませんね。
──── 非常にシンプルスタイリッシュな画面でしたが、デザイン上のこだわりがあったんですか?
ずんだ:機能的にすごくシンプルで、いつもだとここにデザインで小ネタ入れてやろうかとか、ちょっと面白いコンテンツ入れてやろうかと思うんですけれども、画面が覗かれたときに気づかれない「普通の時計」にする必要があったので、いろいろ抑えました、
──── デザインも方法もあえてのシンプルで、かなり早めに仕上がったんですね。
ずんだ:デザインについては、昼間ちょっと仕事サボってぱぱっと。1時間くらいでできたんじゃないかな、ロゴ含めて。
ZEN:毎回そうですけど、デザインはもはやディスカッションしないですもんね。ずんださんが投げてきてくれたものを即、Goで。どっちかっていうと、プログラムのハマさんとずんださんのディスカッションが多いかな。
ずんだ:どうだろう。中身は最初のディスカッションで共通認識できてるし、僕が画面共有しながら作って、「こんな感じでいくよ」「OK」っていうリアルタイムのやりとりだけで。
ZEN:何のスキルもない僕からするとなんか知らんうちにできてきてる。
ハマ:作ってる時って大体全員いないんだよね。できあがると出てくるんだよ。
(一同笑)
──── 全体的にかなりスムーズにできたんですね。提出もトップでした。
ハマ:トータル1時間で作って、デザイン当てるのに使った時間も、多分2〜30分くらいだから。
ZEN:当てるデザインが少なかったっていうのもありますよね。
ハマ:それでもツクアソ参加歴から言えば一番時間がかかった回だよ。それで毎度LINEスタンプ作ってみたり、結構いらんことしてるよね。
ZEN:そういうところを楽しむチームなので。
──── 他のチームの作品で気になったものはありましたか?
ずんだ:プログラムのことが全然分からないので、単純に面白いものが印象に残りがちなんですよね。「GegeloMap」とか、そういうやつが。
ツクアソは、ただただ、「すげー」って思うものばっかりですね。ほんと皆さん、よく考えますよね。
suckhal:僕はLINE CLOVERを魔改造したやつですね。うちにもいるので、CLOVER。呼びかけると「サービスは終了しました」って言うんですよ。悲しみがある。
(一同笑)
ZEN:うちのチームは非プログラマばっかりなんで、他のチームの皆さんと判断基準がちょっと違うかもしれないですね。みんなクリエイターではあるんですが、視点が違うんだと思います。
ツクアソはプログラマのお祭りだけど、クリエイターの集まりでもあるから、もうちょっと幅広いジャンルでクリエイションする人がチームにいると、より面白いものが生まれるのかも、と思うんですよね。審査の視点にしても。
ずんだ:物を作りたい気持ちは一緒だもんね。面白がる気持ちも同じ。
──── 次回も参加していただけるものだと解釈しますけど、今度はハードを作るというのもありなんですよね?
ZEN:なにしろスタートは「物作ろうぜ」ですからね。ハマさんも「キットはある」って言ってるし。プレゼンで見ててもインパクトあって面白いよね。人が思いつかないもの、狙いたい。
ずんだ:そうだね、プレゼンが面白くなる。
suckhal:やりたいね。アイデアでもいつも出るし。
──── では、次回もぜひよろしくお願いします!ありがとうございました!