2023年2月9日から17日にかけて「第4回ツクってアソぶハッカソン」(通称ツクアソ)が開催されました。
今回のテーマは『水!!』。このシンプルかつ自由度の限りなく高いテーマを前に、受賞者たちは、実に個性豊かな作品を見せてくれたました。そんな彼らに行った恒例の受賞者インタビューを公開します!
今回は優秀賞を受賞したふーぴんさんへのインタビュー。
ふーぴんさんの「Uzurium」は、モーターで回る磁石の磁力を使って筒内の水に渦を発生させ、光の演出と組み合わせて目を楽しませてくれるインテリアアイテム。オリジナルライティングのプログラム、渦と光のシーケンス制御による演出も巧みなものでした。プロダクトの面白さはもちろん、プレゼンのクオリティが高く、シンプルながらしっかりアピールできているところも高く評価されました。
美しいハードウェアの持つ独特の世界観で会場を沸かせたふーぴんさん。開発の過程、プレゼン当日の様子、「Uzurium」への思いなどたくさんお話しいただきました!
ふーぴんさんのプレゼンは 01:04:57 〜
──── 優秀賞おめでとうございます。
ふーぴん:ありがとうございます。
──── 今回のツクアソのテーマである「水!!」ですが、これを出されたのはふーぴんさんでしたね。このテーマに決まった時の率直な気持ちをどうぞ。
ふーぴん:「よっしゃきたぜ!」って感じでした。
(一同笑)
──── どうして「水!!」なんですか?
ふーぴん:もともと、水に関連するものを作りたいなと思っていたんです。去年の暮れに、岐阜県の大垣市でメーカーフェアがあったんですけど、そこで「マグネティックスターラー」っていう、水を混ぜる装置を展示している人がいたんですよ。それを見て、「渦を展示するなんてすごい面白いな」と思って。そこから、水を回して渦を表現できる何かを作りたいなと考えてたんです。テーマ決めの時は、「渦」って書こうか「水」って書こうか迷ったんですけど、とりあえず「水!!」にしました。
──── なるほど。そもそもハッカソンが開始される前から水について考えていたんですね。
ふーぴん:そうですね。ハッカソンでいきなりハードウェアをガガッと作り切るのって、かなりハードルの高いことだと思うんですけど、コツコツ作ってた要素が若干あったので、そこを今回のテーマにうまく乗せることができました。
──── 選んだ方がちゃんと賞を取ってくださってる。すごく嬉しいことです。じゃあ、テーマが決まった段階から、もう作る物のイメージはできてたんですか?
ふーぴん:はい。ただ、見せ方については全然考えてなくて。以前から、カクテルをシェイクする様子を表現したらエンタメになるんじゃないか、という構想があったんですが、それを本当にやり出すと、カクテルを混ぜるところと、それを取り巻く演出に関する部分をかなり作り込むことになります。それだと開発量が多過ぎてとても間に合いそうにないんで、提出日の20時時点では、とりあえず単体で見せられるものを提出しようと。それでスタンドアローンで回ってくれるUzuriumを1個だけ作って提出しました。ネタはありましたけど、ハッカソンで作るっていう観点で、具体的に作るものは変えたっていうのが実際ですね。
──── 確かにカクテルをテーマにすると、プレゼンや見せ方のハードルが上がりそうですね。だからツクアソでは、自分が使いたい技術を最短で見せられるようなものになったんですね。複数並べてあって綺麗な色で光って、すごくフォトジェニックなビジュアルでした。熱帯魚の水槽みたいな…。「Uzurium」という作品名はそのあたりからきてるんですか?
ふーぴん:最初はテラリウムがいいなと思ったんです。テラリウムで渦を再現しているから「Uzurium」なんですけど、1個置いてあるだけだと正直映えなかったんで、1週間の間に量産して編集用に並べました。
──── 本当に綺麗でした。あれが雑貨屋に置いてあったら、買ってみようかなって思います。アロマキャンドルみたいな、お部屋の癒し要員で。
ふーぴん:中身をお湯にして、アロマオイルを入れるといい感じで拡散されると思います。それもちょっと思いついて、実際アロマ屋さんでお話聞いて考えたりしました。
──── それはますます商品化が具体的になりますね。あとは販売してくれるメーカーさんを探して…。
ふーぴん:メーカーフェアとかで売ってみたいなっていう考えもあります。掴みが良ければクラウドファンディングやってみようかな、とか。夢が膨らんでます(笑)。
──── いや、これはいけますよ。期待してます。
制作自体に関するお話もお聞きしたいんですが、お仕事でハードウェアを扱っていらっしゃるんですか?
ふーぴん:はい。本業では回路設計をやっています。なので、回路周りは自作です。あとはモーターで磁石を回して渦を作っているのと、ネオピクセルLEDを使って光をつけてます。仕組みとして大きくはその2つですね。
──── テーマが発表になって、作るものが決まって、すぐに開発をスタートしたんですか?
ふーぴん:そうですね。オープニングの次の日(金曜日)は一応休みにして。ケースから全部作ったので、夜にケースの設計をして、夜中に3Dプリンタ回して、翌朝を迎えて。
──── 土曜日の段階では、ガワはできてたと。
ふーぴん:そうです。ガワからスタートして、スタンドアローンで動くというところをアピールしたかったんで電池駆動にしたんですけど、実はその電気回りで結構トラブって苦戦しました。手持ちのDC-DCコンバータの電流能力が渋くて、LEDの光量を光らせすぎると電源が落ちたり、起動時の突入電流でDC-DCが止まっちゃったり。いちいち「なんじゃこりゃ!」を繰り返して。最終日もそこに引っ張られてちゃって、かなりギリギリになりました。大体想像通りに動くようになったのが提出日の16時ぐらいでした。そこから提出用の動画を撮り始めたのかな。
──── 4時から動画を作成し始めたってことは、残り4時間しかなかったってことですね。
ふーぴん:でもその時はまたプレゼン用じゃなくて、提出用の動画だったので、ザクザクっと撮ってなんとか。
プレゼン時にはとにかく量産して並べて映えさせたかったんで、提出した瞬間に部品発注を始めました。それで同じものを5個複製してって感じですね。それも結局ギリギリになっちゃって、本当にプレゼンの直前まで動画を編集してましたね。今回は全部ライブでしゃべろうかなと思ってたんですけど、失敗のリスクもあるし、時間切れになって終了でーすってなるのが嫌だったんで、なんとか動画でやり切るために必死で。
──── プレゼンの映像もすごく綺麗に作ってらっしゃいましたね。
ふーぴん:そうですね、動画だと作り込めるし、時間切れみたいな失敗もないので、頑張ってこだわって作りました。一眼レフの明るいレンズ使ったり、背景暗くしてみたり。
──── すごく上手いなと思いました。他にもハッカソンに出られてるんですか?
ふーぴん:色々出させてもらってます。今年は初めてですけど、去年は2回か、3回ぐらい出ました。最近オフラインのハッカソンもぼちぼち開催されるようになりましたし。僕、オフラインが好きなんです。やっぱりハードウェアは実物を見てほしいという気持ちがあって。これはメーカーフェアにも出したいなあと思っています。
──── 場所とタイミングが合えばぜひ、本物を見に行きたいです!今回のツクアソもたくさん作品が出ましたが、気になったものはありましたか?
ふーぴん:ひげだるまさんの「Splatwash」ですね。演出をリアルでやってたじゃないですか。あれ、すごい上手くて良かったです。あとは最優秀賞の「ダムダムビーバーズ」。プレゼンが面白くて爆笑しながら見てました。
──── プレゼン力が高い人たち、いますよね。ひげだるまさんは本当に毎回お上手なんですよ。ふーぴんさんも前回のツクアソ、参加されてましたよね。
ふーぴん:はい、「いや違う。そうじゃない。」っていうテーマでしたね。僕は前回はゾンビを作りました(BlockZombieSimulator)。
──── あれも面白い発想でした。「これじゃない」感があって(笑)。カメラで撮ったものがゾンビになるんですよね。
ふーぴん:そうですね、レゴを撮って、色合いの量に応じてゾンビをいろんなパラメータ振って出すっていうものでした。この時賞を逃して悔しかったんで、今回の優秀賞は本当に嬉しいです。
──── 結構テーマに左右されますよね。次回は8月開催予定です。またのご参加をお待ちしております。
ふーぴん:ぜひまた発表させていただきたいです。こういう、「俺得!」みたいなテーマのハッカソンは少ないので、良いイベントだと思ってます。常連さんも、回を追うごとにどんどんレベル上げてくるので、それも面白くて楽しみなんです。
──── 自由に遊ぶ、作りたいものを作る。縛りがないのが「ツクアソ」でございます。次回も面白い作品期待してますね。本日はありがとうございました!