「第10回ツクってアソぶハッカソン」受賞者インタビュー③ 優秀賞 まっつんさん

2026.07.30

──── 優秀賞おめでとうございます。受賞は予想されていましたか?

まっつんさん いや、取れないと思っていました(笑)。個人的に発表をミスしたなと思っていて、ライブデモにすればよかったなと。なのでびっくりしましたね。

──── 発表は2分と短かったですものね。今日はたっぷり時間があるので、作品の紹介からお願いします。

まっつんさん 「人間を探せ」というゲームを作りました。プレイヤーはどちらも人間で、1対1、あるいは1対複数で、2つの陣営に分かれて勝負します。人間側はAIに化けて逃げる、捜査官側は人間を見破る、という形です。

まず捜査官が質問を書きます。その質問は、1人の人間と4体のAIに同じように投げられます。AIはそれぞれその質問に回答して、人間もAIのふりをして回答する。捜査官はその5つの回答を比較して、どれが人間かを見破ります。4体のAIの中にどれだけ紛れ込めるか、というゲームですね。

──── 難易度の設定もありましたよね。

まっつんさん 「やさしい」「ふつう」「むずかしい」があるんですが、これは回答する側の人間に対して、「AIならこんなニュアンスや言葉遣いで答えるよ」という例がいくつ出るか、という違いです。2個出るもの、1個出るもの、なしで答えるもの、という形になっています。

──── UIも音も世界観も、バランスがすごく取れていると思いました。参考にしたデザインはあるんですか?

まっつんさん 参考というほどではないんですけど、警察ものというんですかね。KEEP OUTの文字と暗い夜の感じですね。捜査官と、それに追われる人間側、というイメージがまずあって、そこからブラッシュアップして今の形になりました。

実は最初はもっと素朴で、ゲームが淡々と流れていくだけだったんです。ゲームプレイとしては今と全く同じなんですけど、味気なさすぎてインパクトが全然残らないなと思って、世界観やUI/UX周りはだいぶ凝りました。

──── 作り直そうと思ったきっかけは何だったんですか?

まっつんさん 友人にテストプレイしてもらったときですね。今住んでいるのが寮なので、そこの友人3人にやってもらったんですけど、面白いとは言ってくれるものの、初めて触ったときの驚いている感じがなかったんですよ。「おお!」ではなく「面白いね」で終わる感じで。ハッカソンでは驚きの部分が大事だと思っていて、インパクトを残さないとダメだなと。これはまずいと思いました。

──── リニューアル後の反応はいかがでしたか?

まっつんさん 全然違いましたね。内容は同じなんですけど、最初のプレイの入り込みやすさが世界観のあるなしで全く違う。世界観って大事なんやな、と実感しました。

──── 入り込ませるために、特にどこを意識されたんでしょう。

まっつんさん イントロ部分のストーリーですね。最初に設定を与えることで、自分は今から何をすればいいのかが分かってもらえるというか。遊び方だけ見ても分かるは分かるんですけど、一回プレイしないと分からないので、入り込めない感じがあったんです。

──── 感情移入しやすくなる、ということですね。

まっつんさん おっしゃる通りです。「今から捜査官になって探さなきゃ」という気持ちになってもらえるかどうかが大きいと思います。

──── 今回のテーマ「みたかAI!これが人類だ!」から、どうやって「人間を探せ」を思いついたんですか?

まっつんさん 最初は、みんな同じだと思うんですけど、人間とAIを戦わせて人間が勝つというスタイルは考えました。ただ、どう転んでも人間の勝ちにしたかったんですよね。このゲームは人間対人間の構図なので、どちらが勝っても人間の勝ちなんです。比較対象がAIというだけで。純粋に対AIにすると、みんな被ってしまうなと思ったのもあります。

コンセプトが生まれたきっかけは、Xで「AI構文」のツイートがよく伸びているのを見たことですね。昔のChatGPTっぽい文体や絵文字をまとめた投稿がよくバズっているじゃないですか。それを見ていて、今のAIが出す文章はもうすごく人間に近いので、逆に人間の方がそっちに合わせることもできるな、と思ったんです。

──── 今回はお一人での参加でしたよね。

まっつんさん 個人ですね。相方はClaudeです(笑)。あとはテストプレイしてくれた寮の友人たちですね。

──── 3日間の時間配分はどんな感じでしたか?

まっつんさん ずっと考えていたわけではないですが、アイデアに1日弱使って、それをもとにClaudeで作ってもらってV1ができたのが2日目。すぐ試してもらって「ちょっと違うな」となったので、3日目でもう一回再構築しました。1日弱が3つに分かれているイメージですね。

──── 詰まったところはありますか?

まっつんさん 回答のばらつかせ方ですね。ここはゲームプレイの重要な部分で、同じAIだったら全部同じ回答になってしまうんです。かつ、せっかく人間が答えるんだったら、回答する人間の側を有利にさせたかったので、モデルの選定とプロンプトの設定は苦労しました。

──── モデルはどんな基準で選ばれたんですか?

まっつんさん 最初はすごく賢いモデル、今ならFableとかを使いたかったんですけど、1プレイのコストがすごく高くて。ちゃんと世の中に出したいと思って作っていたので、そこも踏まえてやめました。

あとは、せっかくAIを4体も使えるのなら会社も分けたいなと思って、OpenAI、Google、Anthropicで分かれるようにしています。各社の違いが出るかもしれないというのは、こだわりの点ですね。ちょうどいいタイミングでSonnet 5が出てくれたので、賢さもコスパも良くて、そこはかなり救われました。なければOpusになっていたので。

──── 裏側のプロンプトはどうされているんですか?

まっつんさん 「一言で言うこと」と文字数の制限だけを入れて、前提などは全部なくしています。AIって前提から答えるので、それだと明らかにAIだと分かってしまうし、人間が紛れ込みにくいんです。1プレイのテンポも悪くなりますし、文字数が増えると打つ人も大変なので。今のちょうどいいスタイルにするのは結構苦労しました。

──── AIが回答するまでのテンポもすごくスムーズだと感じました。

まっつんさん あそこは実は、思ったより速かったんですよね。回答前にAIが考えているフェーズがあるんですけど、本当はモデルごとに回答時間をばらつかせて「ちゃんと考えているんだな」と分かるようにしたかったんです。ただ想定より速かったので。まあ結果としていい感じになったので、これはこれで良かったかなと思っています。リアルタイムで考えているというのを分かってほしかったんですよね。

──── 他のチームの作品で印象に残っているものはありますか?

まっつんさん お葬式のやつですね。あれはやられました。今ってAIの移り変わりがすごく激しいじゃないですか。特に今年に入ってから、GPTがすごい、Claudeがすごいと、モデルがいっぱい出てはすぐ死んでいく。あれを追悼できるというのがいいですよね。発表もすごくて、世界観がしっかりしていました。そこまでやるか、と思いましたね。

──── 普段からアプリを作られているんですか?

まっつんさん 仕事は別なんですよ。ものづくりは3Dプリントとか、どちらかというとハードの方が多いですね。ただClaudeが出てきて、アプリがすごく簡単に作れるようになったのもありますし、ハードをやるにしてもアプリケーションが必要になったときは、UI/UXや世界観を一番大事にしています。そこを適当にやってしまうと、せっかく中身が良くても全部台無しになってしまうので。発表も含めて、見せる部分はしっかりしたいなという気持ちがあります。

──── 画面の中の、紙をテープで貼ったような表現も素敵でした。あれはご自身のアイデアですか?

まっつんさん あれはClaudeですね。ああいうUIは、こちらが伝えた世界観をすごく汲み取ってくれました。壁打ちしていく中で「こんなのどう?」といくつも提案してくるので、それに対して違う、違う、あ、これいい、という感じで自分で選んで採用していきました。ただ、大まかなところは最初に出してきたV1のままだったので、自分で指定しないとこの形にはならなかったですね。提案力もすごいなとびっくりしました。

──── 最後に、作品について言い残したことがあれば。

まっつんさん このアプリは回答する側に重きが置かれていると思われがちなんですけど、実は質問を投げる側も大事なんです。質問もちゃんと考えるとゲームとして面白くなる。どちらも頭を使わないとダメだよ、というところは伝えたらよかったなと思っています。

紛れ込ませたいのであれば、自分が回答したい答えをAIにも言わせるように仕向けて、それと同じように出せばいい。そういう意味で、AIに寄せていく頭の使い方が大事なんですよね。

──── 本日はありがとうございました!