──── 優秀賞おめでとうございます。他の受賞者の方にも「印象に残った作品は?」と伺っているのですが、今のところ全員が「お葬式のやつ」と答えられています。
kumaさん 本当ですか(笑)。恐縮です。
──── まずは作品の概要を教えていただけますか?
kumaさん 普段ひっそりとサービス終了していくAIモデルたちを、人間と同じように葬儀を挙げて見送るアプリです。AIが自分一人ではできない体験をAIにさせよう、というコンセプトで作りました。
ナレーション付きで葬儀が進行していきます。「本日はGPT-4.5 Previewの葬儀に先立ちまして、故人とのお別れの時間でございます」というところから始まって、参列席には今をときめく現役のモデルたちが親族として並んでいます。
──── 故人の紹介文がかなり作り込まれていますよね。
kumaさん GPT-4.5 Previewは「歴代最大級の体を持ちながら、物腰の柔らかい性格で、誰よりも人の話を聞くモデルだった」という紹介になっています。この紹介文は、実際にそのモデルを使っていた人のX(Twitter)の投稿をもとに作っていて、本当にそういう特徴だったのかを裏取りしています。惜しんでお別れをしている人の声をちゃんと拾っている、という形ですね。提供終了の経緯も、GPT-4.1の提供開始に伴って公開から4ヶ月半でAPI提供が終了した、というところまで入れています。
──── 葬儀の流れそのものも本格的ですね。
kumaさん 地味に棺の中を覗く機能があったり、ご焼香で祭壇へ進んでいただいたりします。最後に「故人へ最後のプロンプトをお送りください」というところがあるんですが、ここは言葉にせず見送る、つまり空のまま送信することもちゃんと考慮しています。そのあと出棺して火葬場へ移送、お骨上げでお箸で骨壷へ納めていただく、という流れです。
終わると証明書がもらえて、画像として保存したりOS標準の共有機能でシェアしたりできます。戒名もちゃんと考えていて、モデル名にちなんだ字が入るようになっています。あと、発表では見せられなかったんですけど、「続きから参列する」機能もあるんですよ。
──── アイデアソンはどんなふうに進んだんですか?
kumaさん 社内で使っているSlackのようなツールで、2人で共同のブレストをしました。まず人間の負の面とプラスの面をどちらも考えるところから始めて、最初はマイナス方向で進めようと思っていたんです。でもプラスの面を考えたときに、肉体的な体験は他と被らなさそうだねという話になって、旅行、アウトドア、キャンプ、山登り、食事、スポーツといった候補が出てきました。
その中でチームメンバーがふと「葬式とかあるよね」と言って、「でもAIにはないよね」と。人間にしかない体験ってなんだろう、という話になっていったんですね。人間にとっての死は、AIにとってはサービス終了だよね、と。それを湿っぽくなりすぎない形でできたら面白いんじゃないか、というところから固まっていきました。
──── AI自身にも聞いてみたそうですね。
kumaさん 「あなたが人間だったら何がしたいですか」「みんなが感じている感覚を感じてみてください」といったプロンプトも投げてみました。切り口をブレストしていたら出てきたので、それを掘っていったらこれになった、という感じです。
──── アイデアソンにはどのくらいかかりましたか?
kumaさん 土曜日には終わらなかったですね。題材さえ良ければ勝ちに行けるところがあると思っていたので、ハッカソンでデモ映えして、かつテーマに沿った要件をギリギリまで決めて、できる範囲で当日提出しようと。なので日曜に急いで実装しました。
──── 技術スタックは何を使われたんですか?
kumaさん 3DはThree.jsですね。あとはゴリゴリJavaScriptを書いています。歌はSuno AIで作りましたが、作詞は僕がちゃんとやりました。今週だけで4曲くらい作っているので、ほぼ作曲家です(笑)。技術選定自体は、ほぼAIありきで決めた感じですね。
──── 開発の進め方も教えてください。
kumaさん プロンプトだけチームメンバーと共有して、あとはほぼ自動で開発してもらう形です。MVPはほぼ一発でできたと思います。そのあと、モデルの特徴で嘘を言っていないかといった細かいところをチェックして提出しました。
──── そのプロンプト、かなり凝っていますね。
kumaさん 目指す世界観や品質の基準、作業の手順まで書いています。「こうしたい」という部分もAIが出してきているので、僕らはチェックをしたという感覚に近いですね。発表内容もシェアして、分かりにくいところがあれば「よく分からん」というフィードバックをもらっていました。
──── 発表の構成も相当練られていた印象です。
kumaさん よく分からなさをある程度残しつつ、何を見せられているんだという気持ちになってもらう、というのは意識していました。実はデモが得意なチームメンバーが発表する予定だったんですが、事情があって僕が出ることになったので、緊張しながらやっていました。発表のイメージだけ共有してもらって、細かいところはこちらで決めた形です。
──── 他のチームの作品で印象に残っているものはありますか?
kumaさん 黒歴史のやつはすごかったですよね。Tripo AIでモデリングしたとおっしゃっていたと思うんですけど、僕も最近使ってみて、あんなに上手にはできないなと思って。かなりこだわってキャラクターを作られたんだろうな、というのが気になりました。クオリティでは勝てないな、と思いましたね。
──── 今回参加されてみて、今後のハッカソンの戦い方みたいなところで感じたことはありますか?
kumaさん 今回はテーマが結構難しかった気がしていて。こじつけ感なく自然にテーマに合ったものを作るのは、なかなか難しいですよね。しかもハッカソンで勝ちに行くとなると、デモ映えするとか、すごいと思ってもらうといった要件も乗ってくるので。
ただ個人的には、さっきのお葬式のアイデアも、出した本人はそこまでいいと思っていなかったんです。それが話していくうちに、2人で深掘りすると面白くできるかもしれない、という可能性を見出せた感覚があって。難しいお題のときこそ、チームで参加すると助けてもらえるのかなと思いました。
もうみんなAIを使っている前提なので、出来上がるもののクオリティは全体的に高いんですよね。だからこそ、何を作るかの勝負になりそうな気がしています。
──── 最後に、次回のツクアソに向けて一言お願いします!
kumaさん ぜひ参加させてください。
──── 本日はありがとうございました!
