──── 最優秀賞おめでとうございます。まずは作品の概要を教えていただけますか?
齋藤さん ありがとうございます。今回作ったのは「めっちゃAI見てる」という作品です。もともとの着想は、巷で流行っている「めっちゃカメレオン」というゲームで、自分でも遊んだりしていたんですね。それを今回のテーマ「みたかAI!これが人類だ!」にかぶせて、AIと勝負して人間が勝てるかどうかを試せるものにしました。
遊び方はシンプルで、プロジェクションマッピングした机の中に、3Dプリンターで作った人型のフィギュアを隠すというものです。フィギュアが白いので、上から映像が投影されると本当に見えなくなるんですよ。それをChatGPTのVLMが検知できるかどうかをAIと競います。上に取り付けたカメラから画像を取り込んで、どこに人型が隠れているかをChatGPTに当ててもらう。1回目は見つかってしまっても、2回目に人の目でもパッと分かりにくいところにきれいに隠せると、見つからない。「これが人間の価値だ」という遊び方ができるものになっています。
──── 最初からリアルな体験型にするつもりだったんでしょうか?
齋藤さん 最初はソフトの中、コンピューター内で完結させることも考えたんですけれども、ハードウェアを絡めたいというのがもともとあったのと、人類がAIに勝つのであればフィジカルな場で勝たなければ、というのもあって。それならリアルな場で体験して遊べるものにできないかな、というのがきっかけになっています。
──── なぜハードに挑戦しようと思われたんですか?
齋藤さん 前回参加させていただいたときに、ハード寄りのアイデアを持ってこられている方が結構いらっしゃって、そういうのも受け入れていただけるハッカソンなんだと分かったので、いつかここでハードに挑戦したいなというのが前々からありました。
あとは正直なところ、最近はClaudeやCodexがだいぶ優秀になってきて、ソフト面での「すごさ」の差別化が難しくなってきたなというのはあります。前回出した「フォーマルジェン」という、写真を撮って証明写真風にするアプリは、当時はディープフェイク的な技術要素もあって面白がっていただけたんですけど、今見るとChatGPTに写真を撮って投げればできてしまう世界になってしまったので。
──── 仕組みの部分で、一番苦労されたところはどこですか?
齋藤さん 超短焦点プロジェクターで机の上に映像を投影して、その上にカメラを取り付けている、という仕組み自体はシンプルなんです。ただ、投影されている場所とカメラで撮った画像の位置をきれいに合わせないといけないので、キャリブレーションの仕組みを入れていて、台形補正も入れています。この位置合わせを本当に一致させるのが、一番大変でしたね。
──── どのあたりが難しかったのでしょう?
齋藤さん 技術的な難しさもありつつ、一番大きかったのはデバッグです。CodexやClaude Codeを使っていると、PC内で完結する話ならデバッグまでやってくれるんですけど、フィジカルな要素が出てくるとエージェントにはどうにもできないんですよ。「これは向きが間違っているな」とか、コードを見て「全然違う変換をしているな」とか、そこは自分で見て気づくしかない。リアルの状況をどう伝えるかが難しかったですね。
具体的な例だと、最初にエージェントが出してきたのは「画像内で台形を検知して変形する」というやり方だったんです。でも実際の画像にはいろんなものが映り込んでしまって、台形が全然検知できない。なので、こちらからマウスカーソルで「四隅はここだよ」と座標を指定して変換する方式に変えました。エージェントはきれいな環境であることを想定して作ってくるんですけど、実際のリアルは結構汚いぞ、という。
──── 市販のプロジェクターだと自動で補正してくれますよね。あれは自分で実装しようとすると難しいものなんですね。
齋藤さん 製品の場合は部屋が暗くて映像だけがくっきり見えている環境が想定されているのと、カメラと投影側の位置関係がもう固定されているので、キャリブレーションがしやすいんです。今回は完全にこちらで後付けしたカメラなので、そのままファームウェアで済むようなものではなく、自分で実装してあげる必要がありました。
──── アイデア出しと制作は、それぞれどのくらいかけたんですか?
齋藤さん 実はアイデアを考えていた時間がすごく長くて、制作自体は応募締め切りの日曜日に着手して、日曜日に仕上げました。それまではずっとAIと壁打ちしながら、いろいろ考えては「なんか違うな」を繰り返していた感じです。ソフトの中でプロトタイプも作ってはみたんですけど、あんまり面白くないな、と。AIの性能を試すとか、人間とAIの差をうまく出すとか、いろんな観点で考えたんですが、キャッチーじゃなかったのでボツにしました。
──── 「めっちゃカメレオン」は、どこで降ってきたんですか?
齋藤さん 急に降ってきましたね(笑)。YouTubeショートでその手の動画がよく流れてくるので、これもしかしていけるんじゃないかと。
──── ハードの調達は大変ではなかったですか?
齋藤さん プロジェクターをもともと持っていたのが大きいですね。壁にプロジェクションマッピングしたいなと思ってメルカリで中古を買っていたんですけど、そのまま眠っていたものを引っ張り出してきました。カメラもただのUSBカメラで手持ちのものですし、人型のフィギュアもパパッとモデリングして3Dプリンターで15分くらいで出力できるので、ハードとはいえ準備自体にはそんなに時間はかかっていないです。
──── 昔からハードも触られていたんですか?
齋藤さん そうですね。ロボットを作ったりするのが好きで、学生の頃からものづくり系のサークルに入っていました。仕事は結構ソフト寄りなんですけど、ハード寄りのことをやりたいというのはずっとありましたね。
──── 普段はチームで活動されているんですよね。
齋藤さん Beaver's Hiveという名前で活動していて、今回はほぼ一人でやったんですけど、他のハッカソンやコンテストにはチームで参加することが多いです。メンバーは昔からの知り合いが多いですね。最近だと、ブラックサンダーのハッカソン「ブラッカソン」で最優秀賞をいただいたりもしました。
──── 発表を拝見していて、オーディエンスをすごく意識されている印象を受けました。
齋藤さん やっぱり楽しんでもらいたいというのはありますね。「そういう発想があったか」とか、「技術的にこういうのも面白いよね」と感じてもらいたいというのは、いつも考えています。
──── 他の受賞チームの方にもインタビューさせていただいたのですが、「あのアイデアは思いつかない」とおっしゃっていましたよ。他のチームの作品で印象に残っているものはありますか?
齋藤さん ありがとうございます(笑)。一番印象に残っているのはやっぱり葬式のやつですね。あれはちょっとびっくりしました。その発想は本当になかったなと。でも確かに毎回モデルは死んでいってるな、という納得感もあって。
──── 最後に、次回のツクアソに向けて一言お願いします!
齋藤さん ぜひ参加させていただきます。次回はチームのメンバーとも一緒に出られたらと思っています。
──── 本日はありがとうございました!
